プロ野球の再編問題は、先週6日に選手会側がストを表明し、それに 対し経営者側、機構側は、オリックス-近鉄(オリ近)の合併を承認。 ただし、その合併凍結の仮処分申請を却下した東京高裁からは誠実に 選手会と話すようにと釘をさされた経営者、機構(NPB)側と、選手会 側との2日間にわたる話し合いの末、週末のストは回避された。
これを、果たして泰山鳴動して鼠1匹と見る向きもあると思うが、 個人的には、選手会側はよくぞ頑張った、と思う。 うちでとってる東京新聞の記事によれば、スト回避直後、ある選手が 言っていた言葉で(誰だったかはメモするのを忘れたが)、「門前払い されずによかった」という声があった。
また、同じく8日の経営者会議を報じた9日付の東京新聞によれば、 これは誰が言っていたかは書いてなかったが、「選手会の言う通りに するのはプライドが許さない」「ここで要望を聞いて、次々と選手会 から要望が出たらどうするんだ」という声があったらしい。
今回の騒動を通じて、当初懸念されていたのは選手会側の話を、経営 者側が全く耳を貸さなかったり、話がかみ合わないという事だろう。
東京新聞の特報欄でも書かれていたが、今まで選手会の扱いに関して は、「高給取りをして、青色申告をしている個人事業主の選手達が 労働組合とは何事だ」という見方をされることが多かったと思う。
昔、プロ野球の試合が135試合から140試合に移行する時、選手会長の 古田がセパ交流戦を提案した時も全く耳を貸してもらえなかったし、 また古田選手がストの可能性について言及しただけで、あのナベツネ は、「高給取りの選手がストだなんて、古田君は労働者たちに殺され るぞ」などと物騒な話も聞かれたわけで。
そう思うと今回、選手会とNPB側が一応歩み寄れたのも、ナベツネが 第一線から退いてくれたおかげなのかもしれない。 でなければ、単なる感情論、水掛け論に終始しただろう。
もちろん、彼らを交渉のテーブルにつかせる原因の一つには、ファン が選手会側のストを支持し続けたということもあるんだろうけど。
で、今回選手会にとって、個人的に一番の成果だと思うのは、 選手会を含んだ形での(5)プロ野球構造改革協議会(仮称)を設け、 両者でドラフト改革、年俸などを1年間協議 だろう。
今回、なぜ選手会がストを持ち出したのかといえば、再編問題だけに 限らず、プロ野球の将来の発展の可能性について、経営者側の論理だ けで進めずに、自分たちも当事者として加えてくれ、という事だと 思うのである。
これは諮問会である以上、実際に行なわれても、経営者側が必ずしも その意見に従う必要がないから意味がない、という意見もあるかも しれない。 でも、今回このプロ野球再編騒動により、各メディア、識者、または ネット論壇で、様々な建設的な意見が出てきたように、プロ野球の 将来性に関してはまだ、今までは出来ずにいたことでも、プロスポー ツマネージメントの専門家の意見など、これからやれることもまだ まだ沢山あると思うのだ。
そして、選手会側が協議のテーブルにつくことによって、それらの 意見も取り上げられる可能性だってあるわけで。 古田選手もそういう席で、自分たちの主張だけでゴリ押ししたりは せずに、おそらくはそういう第三の専門家の意見を入れるように するだろうし。
それに何より、今までは閉鎖的に進められてきたプロ野球の将来に ついての議論が、これである程度はオープンになることで、経営者 側も勝手に事を進めにくくなる、という首に鈴をつけることに成功 したんじゃないのかな。
もしも経営者側がそういう建設的な意見に全く耳を貸そうともしない のなら、結局プロ野球のファン離れは今以上に進むだけだろう。 それこそ経営の危機につながるんじゃないかな、と思うのだ。
でもね、その上で一つ言うなら、もう巨人中心、TVの放映権頼みの 経営はこの先とても立ち行かなくなると思う。 ただし、だからといってそれでプロ野球が終わりになるとは、私は 思わないのである。
確かにプロ野球は、というより巨人は視聴率が取れなくなることで、 TVソフトとしての主役の座からは降りることになるかもしれない。
でもね、ならば試合に直接足を運んでくれるファンの人たちに対し いい試合を見せる努力をしていけばいいだけの事だろう。 ホークスやファイターズは、そういう試合を見せ球場に足を運んで くれる経営努力をしていることで、観客動員をどんどん増やしている のである。
そのために必要なのは、選手達の頑張りであり、プロ野球の経営と いう意味では、選手会と経営者側は対立するものではなく、手を携え て共に歩むべきものだと思うのである。
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