この前、キャバレーを見たときのパンフレットに、ちょっとだけミス サイゴンのエンジニアについて触れている箇所があり、それで興味を ひかれたので、急遽チケットを手に入れて見に行ってみる。
前回のキャバレーがブロードウェーのキャストなのに対し、このミス サイゴンは日本人キャストだけど、演出は外国人。 メインキャストに松たか子、知念里奈、市村正親、筧利夫他があたり、 一つの役に4人の役者が公演ごとにかわるがわる出演するという、クワ トロキャストという異色作。
とりあえず一番見たかったのが、松たか子、筧利夫の組み合わせで、 そして日曜に行なわれる日がこの日だったわけですね。
ちなみに購入したのが直前だったので、A席の2階だったんだけど、 真ん中よりの席で結構満足できる席でした。ちなみにオペラグラスの 貸し出しもありました。
で、公演場所は帝国劇場。生まれてはじめての帝劇である。 なんかもう、個人的には帝劇で舞台を見るというだけで、有閑マダム気 分というか、その事だけでもイベントに参加している気分なのである。
だって劇場なのにアクセサリーとか、お土産とか売ってて、限定50個の おにぎり弁当はいかがっすか、と売り子さんが叫んでいる劇場は初めて なのだ。
ま、もちろん値段は帝劇価格でちょっと高いんだけど、せっかくだから 買ってみました、おにぎり弁当。 ええ、おいしゅうございましたとも。 なんか、有閑マダム気分が味わえて得した気になったのである。
さて、肝心のミュージカルに関してであるが、 ストーリーはさておいといて、松たか子の歌はうまいなあ、とつくづく 感心したのである。
なんていうのか、伸びのある声が劇場いっぱいに響きわたっているのを 聞くだけで幸せ、って感じ。 相手の男優さんとのハーモニーもきれいだし、松たか子のもろ肌の踊り 子姿も見られたし<ちょっと違うか。 でも、演技がこなせて歌も歌える松たか子は、本当にミュージカルに 向いているよなあ、と思うのだ。
また、筧利夫のエンジニアは、まあいわゆるポン引き役なんだけど、 その動きはまさに筧ちゃんそのもの、という感じで、舞台を所狭しと 駆け回っている姿はとてもよかったし。
ラスト前にかかるソロパート、「アメリカンドリーム」の曲の時なんか 観客を一人で見事に引き受けている姿が格好よかったのである。 このエンジニア役、他にも市村正親、橋本さとし、別所哲也がやってい るんだけど、他の人だったらどうなるのか、ちょっと見てみたくなった り。
ちなみに筧ちゃんバージョンは、カーテンコールの回数も多く、最後ま できっちりと楽しませていただきました。
さて、ストーリーについてである。 (以下ネタバレにつき、読みたい人だけ要反転ドラッグ)
舞台はベトナム戦争末期、明日にも首都サイゴンは陥落し、米軍は撤退 をはじめるという日。
そんな中でもフランス系ベトナム人のエンジニアは、米兵相手に売春の 商売を行なう一方で、アメリカに渡るビザを手に入れようとしている。 そこで今日から働き始めた、まだ商売経験がなく生娘のキムに、一人の 米兵、クリスが出会い恋に落ちる。
クリスは彼女を妻に迎え、共にアメリカに渡ろうとするが、まさしく その時にサイゴンは陥落、二人は離れ離れになってしまう。
それから3年後、エンジニアはベトナム政府高官の手先として、キムを 見つけ出す。キムを探していたのは、キムのいとこの元婚約者。しかし キムは彼と結ばれることを拒む。彼女にはすでにクリスの子供がいたの である。
キムはいさかいのさなか、いとこの元婚約者を殺してしまう。エンジニ アとともに逃げるキム。エンジニアは、キムの子供をダシにして、自分 もアメリカに渡ることを夢見て、バンコクへと向かう。
バンコクで観光客相手のポン引きとホステスをしているエンジニアと キム。そこでクリスの元上官と出会う。エンジニアは、クリスの子供が 手元にいることをアメリカ大使館に告げていたのだ。
クリスの上官はクリスもバンコクに来ていることを告げる。3年ぶりの 再会を喜ぶキム。エンジニアのすすめに従い、クリスのホテルへと向か うキム。しかしその部屋にはクリスではなく、クリスの妻が待っていた というストーリー。 ラストはできれば劇場で見てくださいまし。
で、ストーリーについて一言でいうと、ちょっとずるいな、という気が したのである。 ま、もちろんこの話をつくったのがアメリカ人だっていうのはわかるん だけど、うまく責められないようなつくりになっているよなあ、と思う のである。 この劇場に見に来ている女性のお客さんたちは果たしてキムとクリスの 妻、エレンのどっちに感情移入したんだろうと思ってみたり。
ただ、ここまでベトナム戦争というアメリカにとっての傷、帰還兵に とっての現地妻という傷によくぞ触れました、とも言えるような気も するのだが、松たか子がインタビューで言っていたけど、この話を 日本人がやると同じくアジア人という事もあり、生々しくなるよなあ という気もするのである。
イラク戦争がまた泥沼になっている今だからこそ余計にそう思うのかも しれないけれど。 でも、同じような娼婦の恋の話としては前回のキャバレーの方が個人的 には好きかもしれない。
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