2004年04月14日(水) |
ここが(ちょっと)変だよイラク問題 |
と、いう訳で3人の日本人がイラク武力勢力に拘束されている問題 である。
で、実の所これがよくわからない。 つうか、わからなくて当たり前なんだと思う。
わかっているのは、イラクで平和的な貢献をする、という意思を 持った日本人が、米軍と地元住民の間で激しい武力衝突の行なわれ ているファルージャでつかまり、解放条件として、自衛隊の撤退を 日本政府に突きつけている、という事と、今まだ彼ら3人の行方と 安否は不明である、という事である。
人によっては、何故日本にだけ明確な要求があったのか 、とか、日本 の事情に詳しすぎることに疑問を抱く人たちや、2ちゃん他では、 3人の自作自演説も飛び出し、また再三再四メディアに登場して解放を 訴えている被害者家族に対して非難し続けている人たちもいるらしい。
だが、ちょっと待ってほしい。 今の段階では、結局何が真実なのかはわからないのだ。
わからないからこそ、人はわかりやすい解釈や説明や、物事を単純化 したいという欲求に駆られるわけだが、今の段階で物事を単純化する のには無理があるだろう。
それは、膠着化した状態でも何かを伝えなければならないメディア だけではなく、話はそれるが例えばアテネオリンピックマラソン競技 選考で、高橋尚子選手が落選した事で、土佐礼子選手側に抗議をした 人びとと同じように、今回の被害者家族たちに非難を浴びせる人たち も同様だろう。
高橋尚子選手がアテネオリンピックに出られないことに文句を言う事 や、自分の家族を助けてほしいと訴える家族に対して非難しなければ ならないほど、その事がその非難をした人の人生にとって重要な事 なんだろうか。
個人的には、あの3人が無事に生きて帰ってきてほしいと思う。彼らは イラク人を害するためや物見遊山で行ったわけではなく、あくまで善意で 役に立とうと思って行ったんだと思うし。
ただし、だからといって、この事において直ちに自衛隊が撤退しなけ ればならない、とは思わない。なぜなら、これで撤退をしたら、おそ らく同様の誘拐事件はもっと増えるだろうと思われるからだ。
でもね、だからこそ、こうも思うのだ。 もし、日本政府が本当にイラク復興のために自衛隊を役立てようと 思って派遣したのであるならば、事態を悪化させ続けるアメリカ軍に 対して、遺憾の意を表しないのか、という事である。
今回の事件の発端は、アメリカ人の民間業者(実は元軍部の雇い兵) 4人がファルージャで殺害されたことである。 そのことに対して、アメリカ軍は何百人ものイラク民間人(何割かは 武器を持っていたと思うが)を殺害し、あまつさえ、彼らの精神的 支柱であるモスクまでも攻撃してしまった。 すなわち報復という口実で、ファルージャで戦争を始めてしまったの は、アメリカ軍であると思うのだ。
これがもしも60年前の日本であったなら、戦後統治をしているGHQが、 報復のために皇居ないし、天皇に対して銃を向けるのと同じような 事かもしれない。
その結果、ファルージャ近郊では、日本人、アメリカ人のみならず そこを通過するあらゆる民間の外国人たちの生命と安全がおびやか されることになってしまったと思うのである。
個人的には、アメリカ軍、およびアメリカ政府は、銃によって解決 するという、一番面倒くさくない安易な方法をとることで、どんどん 事態を悪化させているようにしか見えないのである。
ちょっと前の内田樹のHPにこんな意見 が載っていた。 実際の微妙なニュアンスについてはリンク先を見てもらうとして ここでちょっと要約すると、
・戦争状態では、善意の第3者は存在しなくなってしまうこと ・日本がイラク復興のため、善意で自衛隊を派遣したという微妙な ニュアンスは、イラクのみならずフランス他の海外では理解されず、 日本がイラクに軍隊を派遣しているという事が強調されているという こと。
そして、もうすでにイラクの状態は、「戦後復興」ではなく、アメリ カとイラク住民の「戦争状態」になってしまっている、という事で ある。
すなわち、非戦闘地域に対して派遣する、という自衛隊の建前上の 前提はすでに崩れ、自衛隊をイラクに派遣し、アメリカと歩調を 合わせる日本政府は、国民の合意ないままに、戦闘地域(の近く) に自らの軍隊を置いている、という風に外部からは見られている 可能性がある、という事である。
そしてもう一つ重要なことがある。 それは、フセイン政権を倒した後、6月30日までにイラクに、親米的な 政権をつくる、というブッシュ大統領の意図が実現するのは非常に 困難になりつつある、という事である。
だって、どう考えても今の時点でイラク住民を殺しまくっている、 アメリカよりの政権ができたとしても、その維持は難しいだろう。 だから、ブッシュ大統領がそのシナリオにこだわり続ける限り、 イラクはベトナム化、もしくはパレスチナ化して、それを武力で 抑え続けるという、アメリカと日本政府にとっての泥沼のシナリオに なっていくことは想像に難くない。
日本政府が、パレスチナを弾圧し続けるイスラエル政府を非難する のであれば、何故、同じ道を歩もうとするアメリカ政府の行いを 諌めることができないのだろうか。
もしも、本当に親しい友人であるならば、相手が間違っていると 思った時には、あえて諌言し、そしてその後気まずくならないような 配慮をすることが真の大人なんじゃないかな、と思うのである。
最悪の場合、日本はアメリカとともに孤立し、中東における利権の 全てを失うんじゃないかという、そっちの方が心配だったりする んだけれど。
参考リンク
東京新聞 イラク邦人人質の遠因? 米国の“ポカ” “逆ギレ”二正面作戦
邦人人質事件の特異性 明確要求なぜ日本だけ
イラク邦人人質 崩れる政府の論理
内田樹の研究室 イラク
Liberation を読んでみる
|