日曜日、久々に父親と旅行に出かけた。 行った先は伊勢神宮。私は日帰りの旅である。
朝、新幹線に乗って名古屋まで。 久しぶりに乗る新幹線は速い速い。 速度を体感するために近くの景色を眺めていたらちょっと気持ちが悪くなる くらい。 この日は本当にきれいな秋晴れの日だったんだけど、富士山は雲に隠れ て見えずじまい。残念。
名古屋からは近鉄特急に乗って宇治山田駅まで。 てっきり伊勢神宮前なんて駅名があるとおもったらないんだなー、なんて 事を考えているうちに駅につく。
さて伊勢神宮には、内宮さまと外宮さまという別々の社がある。内宮は 天照大神、そして外宮は豊受大神と、別々の神様をおまつりしている訳 ですね。
なんでこんな事を詳しく語っているかと言えば、我が家の宗旨が神道だから で、神棚には伊勢神宮のお札が安置されている訳ですね。 で、今回の目的は五穀豊穣の神様でもある豊受大神に祈願することなのだ。
だから、まずは駅にも近い外宮さまでさっさと祈願してこようと思ったら、 ものには順序があるそうで、父親曰くまずは内宮に行ってから、外宮に行く のが、正しい順序らしい。
なのでまずはバスに乗り、内宮へ。 で、その内宮、実は無茶苦茶自分好みの場所だったんである。
伊勢神宮と言う、まあ東京ドーム何個分かは知らない大きな森があると 思ってくださいな。 そこにたどり着くためには外周をぐるっと、バス代410円も払わないと たどり着かないくらい、広いわけですね。
で、実際に鳥居をくぐって参道に入ってみると、なんでわざわざこんな 不便な場所に内宮を持ってきたかがわかる気がするのだ。 内宮の敷地内に入ってビックリするのは、周囲にビルや電信柱などの、 人工的な建物が目に入らないつくりになっている事である。
それだけではない。伊勢神宮の森の木々と、町を取り囲むようにそびえる 周囲の山々が一体になって目に飛び込んでくる感じがするのだ。
伊勢神宮が出来てから、千年以上も経つわけだけれど、千年前の公家さん も、江戸時代に一生に一度の伊勢参りをしていた庶民たちも、これと全く 同じ風景を見ていたんだなあ、と思ったら鳥肌が立つくらい感動している 自分がいたのだった。
また、伊勢神宮の社を取り囲むように生えている林?森?もとても美しいの である。
一般に森と言ったら、どんな景色を想像するだろうか。 薄暗く、じめじめとした、例えば富士山のふもとの樹海みたいなイメージ だと思うんだけど、この森は光が入りこんできて、とても明るかったのだ。
それは、この森がアカマツなどの照葉樹林であることが理由なんだと思う。 樹齢何年かわからないほどの高い木々のてっぺんの方にしか葉が生えて いないので木の下の低い木や草にも充分、太陽のめぐみが届いている 明るい森。
そうなるためにはもちろん、人びとの充分な手入れが必要で、例えば 桃太郎のおじいさんがしたように山で柴刈りや間伐をしなければ、 こういう明るい森には、なかなかならない。
昔は、日本の各地にこうした明るい森の里山があったのが、燃料が ガスや石油にかわり、また過疎化が進んだ影響で、こうした明るい 森が少なくなり、樹海のようにうっそうとした森や、はたまたゆが んだ林業のせいで杉やヒノキだけになり、手入れもされなくなった。 なんて話を司馬遼太郎のエッセイで読んだのを思い出した。
だから伊勢神宮の森って、日本人としての原風景とでもいうべき、 数少ない風景なんだと思うのだ。
自分の家の近所には、都心の中では数少ない自然を残す、明治神宮の 森があり、よく訪れているんだけど、そのつくりなんかを見ると明治 神宮は、伊勢神宮を真似てつくっている部分もあるんだなあ、なんて 気がする。
そんなこともあり、この風景がたちまち好きになってしまったわけだ。 当日は本当に日本晴れだった事もあり、なんか日本人でよかったなー、 なんて気になる場所でした。
そんな感じの内宮様をお参りした後は、またまたバスに乗り、外宮へ。 外宮は内宮に比べると、ひっそりとしていることあってか、ちょっと こじんまりとした感じ。
お参りをすませた後、神楽殿にてお神楽をあげてもらう。 お神楽とは、よく神前の結婚式でぴーひゃーらー、となるあの曲とともに 神主さんがおはらいをし、巫女さんが踊る儀式のこと。 ってちょっと違うか?
なんでそんなことをするかといえば、お願いをする神様を喜ばせるため。 すなわち日本の神様は音楽好きで踊り好きなわけですね。 で、そんなふうに神様をおもてなしをして祈願をする、というのがお神楽 なのである。
そんな感じで伊勢神宮参りを終わらせた後、父親と別れて一路名古屋へ。 ここでもう一つのこの旅の目的、ひつまぶしを食べに行く。食べに行ったの は、名古屋の繁華街、栄にあるデパート、マツザカヤ南館10階にある、 あつた蓬莱軒。
インターネットで色々と調べたんだけど、一人で入るんだったら、デパート が入りやすいだろうし、あつた蓬莱軒というお店自体、ひつまぶしのお店と して有名らしいので、試してみたかったわけですね。
実際に行ってみると、すんごい行列だったんだけど、中が相当広いらしく、 すんなり入る事ができた。 で、やっと念願の?ひつまぶしを食べる事ができて大満足。
荷物を抱えている事もあり、その後寄り道なんかしたりせずに、そのまま 名古屋から新幹線で東京へ。
朝の新幹線と違い、夜の新幹線って、ちょっと神秘的な気がする。 まるで地上を走る旅客機のように、静かに一直線に走っていく新幹線。 遠くに見える街明かりが星のまたたきの様に輝き、「千と千尋〜」のように 時折ネオンサインの看板が遠ざかっていく。
まるでその時間は銀河鉄道の中にいるような、そんな不思議な感覚だった。
追伸: せっかく伊勢神宮に行ったのに赤福を買い忘れた事に気がつき、あわてて 新幹線のホームで買ったんだけど、よく見たら赤福ならぬ「お福もち」 だった。 おそらくは赤福のばったもんというか、コピー商品。
で、実際に食べてみたら、これまた味もコピー商品らしく、微妙な味で ございました。 伊勢で買っとけばよかったかも。
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