パラダイムチェンジ

2003年08月11日(月) PRIDE GP

SKILLよりWILL。
そんな言葉を思い出させてくれるような試合だった。
PRIDE GPの事である。

メイン試合は桜庭和志対バンダレイ・シウバの因縁の決戦。
その他にも、ミドル級のGPにも関わらず、ヒョードル、ノゲイラ、そして
ミルコ・クロコップのスペシャルマッチも組まれる超豪華な取り合わせ。

私はTVで見たんだけど、メインの試合を含めて、思わず息を呑む、そんな
試合のオンパレードだった。


まず、私の目を引いたのは、吉田秀彦対田村潔司の日本人対決。
柔道から総合格闘技に移ってきて今まで負けなしの吉田と、総合格闘技の
世界で生き残ってきた田村。寝技と立ち技の闘い。

寝技に持ち込もうとする吉田に対し、その間合いに入れさせまいと、
ローキックを見舞わせる田村。そしてそれをよけもせず、そのまま喰らい
続ける吉田。
試合後は、そうとう左足は腫れ上がったに違いない。

試合はこのまま田村優位で運ぶと思った刹那。田村の間合いの内側に
入った吉田の払い越しが決まり、面白いようにグラウンド体制から
吉田の締め技が決まり、試合は吉田が勝利する。

ただし、試合が決まった後、腫れ上がった足の為にまともに歩く事の
できない吉田。
その状態になるまで足の痛みをこらえ、じっと自分のチャンスをものに
しようと虎視眈々と機会をうかがっていた吉田の執念が勝ったという事
なのかもしれない。


そして、メインイベント。桜庭対シウバ。
私は、桜庭選手が結構好きである。
その意外性といい、IQレスラーとも呼ばれる身体能力と脳の関連性の高さ
は、今までの格闘技選手には見られないものだった。

ただし、2年前、今回の対戦相手バンダレイ・シウバに負けてからは、
昨年夏のミルコ・クロコップ戦といい、負ける試合が多くなってきて
しまった。
でも、これってあまりに期待の大きすぎるマッチメイクにも問題があると
思うんだけれど。
今回は、その因縁の相手、シウバを相手に起死回生の試合に臨む。

その相手のシウバ選手は、逆に桜庭に勝って以来負け知らず。ミドル級の
シウバに対しヘビー級のミルコ・クロコップと闘った試合でも、引き分け
、数多くの日本人選手を含む挑戦者を退ける現PRIDEミドル級のチャン
ピオンである。
もちろん、今回のGPでもチャンピオンの最有力候補。

さて、そんなメインイベント。
どっちを応援するか言われれば、無条件で桜庭選手を応援したくなる。
でも、そんな私でも感じるのは、バンダレイ・シウバの目線の強さである。

シウバ選手。力強いパンチ力がもちろん武器ではあるけれど、それだけが
全てではない。
やはり王者の風格と言うか、必ず自分が勝つと信じきっている目の強さが
あるような気がしたのだ。


序盤戦、試合は互角に進んだ。
シウバ選手の懐に飛び込もうとした桜庭選手の、額が切れて出血すると
いうアクシデントがあったものの、桜庭選手も相手の相手のパンチをよく
見切り、自らもパンチを繰り出し、シウバ選手を押し気味の試合運びを
していた。
シウバ選手も今までのような怒涛の攻めが出来ずに、正直どう攻略しよう
か、戸惑っていたのかもしれない。

試合の転機が来たのは1R中盤。
桜庭選手がシウバの右足にローキックを打った時だった。
ローを放った瞬間、ちょっとガードの下がった桜庭選手の顔面に、
ローをかわしたシウバ選手のストレートが見舞われたのだった。

それはたった2発のパンチだった。
でも、たった2発で充分だった。

2発の内の一発がきれいに桜庭選手のあごを捉えた結果、
桜庭選手はきれいにマットに沈んでいった。

結果は桜庭選手のTKO負け。
今回も桜庭選手は自分らしさを出す前に負けてしまった。


思えば今回のPRIDE GP、技巧の上手さよりは、選手のガッツが目立つ
試合が多かった。
すなわち、相手がマットに沈むまで、ひっきりなしにパンチを繰り出した
方の勝ち。
もちろん、そこには技巧の上手さもあるんだけど、そんな駆け引きを無視して、とにかく手数を多く繰り出した者が勝っていた気がするのだ。

それは現PRIDEヘビー級チャンピオン、ヒョードルの試合や、K-1からの
刺客とでもいうべきミルコ・クロコップの試合を見ていてもそう思う。

そしてシウバ選手を含めてこの3人には、思わず息を呑んでしまうような
目の力の強さが共通していたように思う。
そしてこの3人に共通するのは、とにかく打撃系、立ち技が強いという
事でもある。

逆に前PRIDEヘビー級チャンピオン、寝技の神様、ノゲイラをもってして
も、勝利するのに苦戦していた印象が残った。
2年前の桜庭対シウバ戦以来、立ち技対寝技では、立ち技優位の印象は
あるんだけど、今回はその印象がなお強くなった感じかもしれない。

いや、もちろん大男同士がガチンコでノーガードで打撃を打ち合い続ける
のも、迫力はあるんだけど。
でも、その一方でガチンコの寝技で決まる試合がもっとあったっていい
のになあ、とも思うのだ。

現ルールが採用される限りは、立ち技優位の時代が続くのもしれない
けれど。

桜庭選手は今回も惜しくも負けてしまったけれど、これに懲りず?
またリングでIQの高い身体性を見せ付けてほしいと思う。
これで引退するんじゃ、もったいなさすぎる。

元UWFインターの山崎選手みたく、新日のG-1クライマックスとかに
参戦してくんないかな。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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