パラダイムチェンジ

2003年07月31日(木) 「神田川」の歌詞がこわかったわけ

ちょっと前の、ほぼ日刊イトイ新聞で、作家の川上弘美と、糸井重里の
対談があった。

その中で、かぐや姫の名曲、神田川の歌詞の話が出てくる。
「ただ〜 あなたのやさしさが〜 こ〜わかった〜」の部分である。
その歌詞の意味について、糸井重里が説明している部分が面白い。

詳しくはリンク先を参照してもらうとして、その部分だけ引用すると、


糸井 男の子たちはバカだから、
ゲームとしての性というのを考えざるを得ない。
つまり、技術の性というのを
考えざるを得ない時期があるんですね。(略)

「もっとうまくなりたい」とか考える。
それを止めてくれる人は、いないんですね。

川上 そうですね。

糸井 実際は、「そんなことしてても、しょうがないや」
と思って飽きて止めるまで、
技術の追求が続いてしまうんです。

ただ、
性の技術の追求と、
「添い遂げる」ということは、
矛盾するんですね。

ある女性を好きになって、
この人をどうやって喜ばせようかということを、
花束であり、プレゼントであり、
様々なやさしさであり、性的技巧であり、と、
どんなにてんこ盛りしてても、
てんこ盛りにすればするほど、
「この人は私を他者として扱っているから、
  添い遂げないんだ」という……。

川上 それがこわいんだ。(略)



この話、前回の「湾岸ミッドナイト」27巻の高木社長の話と絡めると
個人的にはもっとわかりやすくなる気がする。

すなわち、
うちの工場には高価な車が入ってくる。
だがオーナーの充足度は驚くほど低い。

それは高価の見返りを車そのものに求めるからだ。
新しい高級車は次々と出るし、いくら追ってもキリがない。

得るべきものはそれとは違う他のモノからくるものなんだ。
わからないから充足を求めていつまでも車を買い換える。



結局、性の技術なり技巧を追求する限り、そしてそれに自分が長じている
と思う限り、その追求はやむ事はないし、また、結局それが見返りと
いえるのかはわからないけれど、新しく魅力的な相手が目に入ってくる
限り、目移りし続けて、結局充分に満足する事はないのかもしれない。


でも、それと「添い遂げる」というか、相手とずーっと一緒にいる、と
決意する事は、糸井重里の言うように、結局別のことなのかもしれない。

結局、それはその人の覚悟と言うか、意思の力で表わされるものなのかも
しれないなあ、と思うのだ。


でね、ちょっと前までの私は、結構、性の、というかモテる為の技巧を
駆使する人間を、恥ずかしながらも目指していたよなあ、と思うのだ。

つまり、よりよい女の子にモテる為には、自分自身を磨く事も大事だけど
それ以上に、駆け引きと言うか、テクニックの部分を磨かなきゃなあ、と
思っていたと言うか。

いやもちろん、恋愛の中には駆け引きの部分もあるし、そのためには
ある程度のテクニックも必要だと思うんだけど。

だけど、そこで本末転倒、というかそういうテクニック優先の生き方を
してしまうと、変な話、釣った魚にえさはやらない、じゃないけれど
絶えず新しいものを追いかける事に精力を注ぐ事になってしまうのかも
しれない。

一般的に、男は浮気をする生き物である、といわれているのは、こういう
男のサガのような習性?を表わしているのかもしれない。

でも糸井重里の言うように、その事と「添い遂げる」という事は、矛盾を
したりもする。


で、ここで二つの選択肢が思い浮かぶのだ。
一つは男としての色気を失わないために、浮気は男の甲斐性、とばかりに
性の技術の追求をしていく道を選ぶのか、

それとも、
あくまで「添い遂げる」という事を主にして、その性の追求をやめるのか
という二つの選択肢が。

これはここで答えの出る問題でもないだろう。
その人の生き方のスタンスによって決まる話だと思うし。

女性だって、いや相手が浮気してもいいから男の色気を失わないで欲しい
という人だっているだろうし、その逆で、浮気でなくてもこの人がどこか
へ行ってしまうような不安感のある相手とは付き合えない、と言う人も
いるだろうし。
なんか叶姉妹みたいな好対照な話だけど。


でも、そこで私はこうも思うのだ。
添い遂げる、という事を選択してなおかつ、男の、というかある種の
色気を失わない方法だってあるんじゃないのかな、と。
まあ、欲張りな話だったりもするわけですが。

で、この事についてはまだ、私の中でも答えは出ていない。
今後も多分、考え続けていくと思う。


でも、もしかしたらヒントになるかもしれない話が、やはり「湾岸ミッド
ナイト」27巻の中にある。
それは、主人公アキオが、あなたはどんなタイプの人を好きになるの?
と聞かれて答えた台詞。


―まあ、スキってゆーか…その…
これからもそばにいてほしい、そうおもうコはいますヨ
できれば、ずっとってカンジで

今、僕の周りにいろんな人がまあ、いて(略)
できればいつまでもいっしょにいたいと思いますヨ
でも、それはムリですよね、きっと

学校は卒業するし、バイトもいつかヤメる
そしてみんなの状況も変わるだろうし
今は当たり前に会えるコトが当たり前でなくなるとゆーか

人は変わると思うんですよ、その心とかじゃなくて…
おかれる状況とゆーか、そーいうのが

かわっていくのが当然のその中で、それでも変わらずいてほしい
それって強い気持ちでなきゃムリだと思うんですヨ

いつまでも会っていたいと、またいつでも会える
それはやっぱり違いますよね

今は同じに見えるかもしれないけれど、
先にいくほどその差は大きいと思うんですヨ(略)

教えられたんですヨ
かわらぬ状況を望むなら、それはお前の気持ちだけ
人も、そして他のコトもすべてお前しだい
それだけだろうって



うん、できれば私もそんな強い気持ちを持つ人間でいたいと思う。
そしてもしも、その気持ちを持つ事が出来たのなら、
「こわくないやさしさ」を持てる人間になるにはどうすればいいのか、
そのうちに見えてくるのかも、しれない。


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