パラダイムチェンジ

2003年03月31日(月) 「本当にうまい朝めしの素」

たまには、最近読んだ本の感想なんてのを書いてみようと思う。
先週、花粉症に関して、個人的な考えを書いてみたんだけど、
最近読んだ本にこんな内容の文章がのっていた。
以下、ちょっと長めの引用になる。


私には有機食品信仰や長命願望や健康志向が全くといってよいほどない。
うまけりゃそれでよいわさ、と単純である。その単純なアタマで考えた
とき、「犯人」はどう考えても「イオン交換塩」なのである。

何の犯人?それは戦前になく、戦後すぐにもなく、昭和の御代もかなり
過ぎてから猛烈な勢いで出現しはじめたアトピーや花粉症をはじめとす
る現代病の、である。

戦後、杉山は確かに増えた。けれども戦前にも杉林や杉山はたくさんあ
り、杉花粉が飛び舞っていた。にもかかわらず誰も花粉症にはならなか
った。アトピーもしかり。

毎日摂取するものの中に犯人がいる。私はこう考えた。水、食品添加物、
農薬、空気、穀類……そして塩。引き算していったら塩が残った。確定
できたわけではないが濃厚な容疑者は塩以外に考えられないのだ。
だから「ヤバい」と思ったのである。ただし理論的根拠は何もない。
それゆえ、極く親しい人間以外には話さなかった。

ところが、はからざりき。JT塩=諸悪(諸病)の根源と決めつける塩
の専門家がいようとは。

阪本さん、かなり憤慨した調子でこういった―。
「要するにJT塩は食べることを考えていないとんでもない塩なんです。
 工業用にはマグネシウムがないほうが歩留りがいいといって最初から
 抜いてしまっている。僕にいわせると塩の中のマグネシウムが腹(腸)
 という土壌を調整し、発酵を促して腹を養なうんです。医学界でも、
 ナトリウムが血液に悪さをするという報告が出はじめましたよ。おっ
 しゃるようなアトピーや花粉症をはじめ、糖尿病も神経痛もにがりを
 薄めて飲めば治るんです。逆に言うとマグネシウム欠乏はそのくらい
 恐ろしいんです」

阪本さんのこの話をうかがって、今や私の犯人=塩説は仮説から確信へ
と変った。
JT塩の入っていないインスタント食品はない。
すべての加工食品や調理済み総菜には塩が使われている。
醤油や味噌、梅干などは塩がなければ考えられない食品である(略)



こんな文章が載っていたのは、川上信定著 「本当にうまい朝めしの素」
という本。そしてその後、この作者は、ある医師に出会う。


阪本さんに、ニガリを水で薄めて患者に飲ませ、著しい効果を上げて
いる医師が山口県防府市にいると聞き、何かがピンときた。
「何という先生ですか?電話は?住所は?お年は?何か著書は?」
血相変えて訊き出した私は、まず著書を取り寄せ、読んでみることに
した。

真島真平『白い塩の恐怖―現代病の原因はニガリ不足だった』 (KKロン
グセラーズ、'96年)―これが名前と書名。(略)

真島医師はまず、人間につながる生命が陸上に進出する前、30億年も海
の中で過ごしてきた事実をあげ「海水、つまりは水と海水に溶け込んで
いるすべての成分が、私たちの生命や生理に重要な意味を持っているこ
とは疑う余地はありません」と述べている。

それゆえ、こと塩に関しては成分一つ一つがどうのこうのというよりも、
トータルに考えて、海のすべての成分をあるがままに、毎日適量を摂取
すればよい―すなわち「自然塩」をそのまま摂るか、「食卓塩」では
不足している「ニガリ」を補給してやればよいという。(略)



あまり長々と引用しすぎるのも、商売の妨害をしてしまうような気がす
るので、この辺で。興味を惹かれた人は、残りはできれば本を手にとっ
て読んでほしいと思う。<フォロー

さて、このことに関して、個人的に思い当たることがある。
自分が花粉症になって以来、特にこの時期は、あまり塩辛いものが食べ
たくなくなった、って事だ。
ポテトチップスなどのスナック菓子やインスタント系食品はもちろん、
おしんこに醤油をたらしているのもちょっと敬遠したくなってしまう。

自分は仕事柄、結構自分の身体の変化には敏感な性質なので、もしかす
ると、過度の塩分に弱くなっているのかもしれない。

ただ、この本を読んでから、周りの花粉症の人に色々聞いてみたり、過
去の事を思い出したりしてみたんだけど、塩分と花粉症に絶対的な相関
関係というか、結びつきは残念ながら発見はできなかった。

自分の周りの花粉症の人って、結構昔から塩辛いのが駄目だった人って
多かったので、体質的に塩分の摂り過ぎに弱い体質(これを東洋医学的
には、腎系が弱いとみるんだけど)の人が、もしかすると花粉症になり
やすいかもしれない、位の話で。

自分自身が、そのニガリを薄めたものを飲んでいるわけではないので、
これで大丈夫、と太鼓判を押した訳ではなく、なんかの参考になれば
どうぞ。


で、その上で個人的な思いつきを少しだけ、繰り広げてみる。
引用文中に関連すると、確か人間の体液というか、組織液の成分って
海水の成分に酷似している。

すなわち、人間の体内には地球と同じく、海水があるわけだ。
そして天然の塩は、その海水を煮詰めることで出来ている訳だから、純
粋なナトリウムだけでなく、海水中に存在する様々なミネラルを含んで
いるわけだ。
それは、くどいようだけど人間の体液も同じ。

そこに、様々なミネラルの補給なしに、純粋なナトリウムだけを供給し
続けてしまうと、結局は体液の中のナトリウムの比率が増えてしまうの
で、身体が塩辛くなってしまうような気はする。

で、人間の生理的な反応としては、ナトリウムが本当に極度に濃い状態
っていうのを嫌うから、それを体外に排出するために、腎系統に負担を
強いてしまうのかもしれない。
その結果、身体の中の必要なミネラル成分も大部分は再吸収されると思
うんだけど、流れ出てさらに薄くなってしまうという一種の悪循環を起
こす可能性はあるかもしれない。

で、そこで話を一段、飛躍すると、もしかするとナトリウムの濃度が
人より濃い人、なんていうのがいたとしたら、その人は水太りしやすい
んじゃないかなぁ?<この辺はただの思いつきだけど。

ただ、一応断っておくと、人間っていうのはそういうのも含めて、自動
調節する機能は備わっているので念のため。あまり真に受けすぎないで
下さいな。
ただ、出来れば天然塩に近いものを摂取しているほうがいいような気は
する。


さて、話がいきなり難しくなってしまって申し訳ない。
そういう難しい話を抜きにしても、この「本当にうまい朝飯の素」って
本は面白いのである。

この本は、卵、米、鮭、味噌など、いわゆる標準的な和食の朝ごはん
メニューの素材に、とことんこだわってみたという料理エッセイである。

そうだなあ、イメージとしては某番組の「本日の特選素材」なんて感じ
かもしれない。例えば米なら米、醤油なら醤油作りにこだわっている
生産者への取材がメインと言えるかも。

で、その部分でこの本のいいところは、それらの生産者への問合せ先が
記載してあること。
だから例えば「美味しんぼ」を見て、そんな事いわれても、どうしよう
もないじゃん、って事はないのである。
読者が読んで、本当に欲しくなったらちゃんとお取り寄せもできる。

そして、もう一つ、この本の面白いところは、それぞれの素材に関して
の、作者の思い入れや、思い出に関して綴ってある部分。
ちょっとだけ引用すると、


コメのワインで思い出した。いいことをお教えしよう。日本酒が世界最
高の調理用酒でもあることを示す二分料理だ。

丼に七分程度の飯をよそっておく。フライパン、少量のサラダオイルと
バター、酒、醤油、上質の牛薄切り肉の5cm角切りを用意する。弱火で
バターを溶かし、オイルをひく。肉を入れ、軽くソテーする。裏がえす
必要はない。火を強め、大さじ3、4杯の日本酒(上質なものが望まし
い)を回しかけ、フランベする。火を再び弱め醤油を大さじ2杯。

この間、2〜3分。でき上った極上のソースを飯にかけ、肉片を美しく
乗せ、紅生姜を中央に置く。食べてごらん。あまりの美味に卒倒するか
ら。

日本酒の代りにワインでやってみたこともあるが、味は月とスッポンで
あった。この丼、唯一のコツは、上質の肉を使うことである。(略)
《米》


知る人ぞ知る、の事実として「中華料理屋のカレーライスはうまい」が
ある。味のよいスープ(湯)で煮込まれているからだ。豚肉もたっぷり。
鰹ダシや煮干のきいたソバ屋のカレーも悪くないが、評判のよい中華料
理屋がカレーをメニューに載せていれば、まずハズレはない。

その、うまいカレーライスの中でもAの上クラスを出す店の一つとして
神田神保町交差点角の「新世界菜館」があげられる。

同店のカレーには、ゴロ、ゴロリという感じで玉ネギが大量に入ってい
る。カレーは辛く、玉ネギは甘い。玉ネギ好きにはこたえられない取り
合せだ。

玉ネギ好きとはどんな人か、答えは簡単、玉ネギを「料理の脇役」と考
えず「主役」と考え、実際に主役として遇する人のことである。不肖小
生もその一人。(略)
《玉ネギ》


ね、ちょっと心惹かれるような気がしません?
引用した牛肉の薄切り丼とか試したくなるし、中華料理屋のカレーは
一回食べてみたいと思うもの。
この本には、他にも思わず引用したくなるような文章が結構あるのだ。

この本、実は友達に借りた本なんだけど、あまりに面白いので自分でも
買ってしまった。
で、仕事の行き帰りなんかに、何の気なしに読めるので重宝しているの
である。

ついでに言ってしまうと、今年から、料理を覚えるぞ、なんて思ってみ
たのも、この本が影響しているかもしれない。
そんなわけで、退屈しのぎにでも<失礼、よかったらどうぞ。
個人的には結構おススメ。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加