2002年07月14日(日) |
医者に謝礼を払うべきなのか? |
故あって、今月から毎日新聞を取っている。久しぶりに新聞を 定期購読して、その内容の意外な薄さにびっくりしてる。
といっても、昔はせいぜい、社会面とTV欄くらいしか読んで なかったんだけど。 なんか、もっと様々な事柄が詰まった知識の箱のように昔は 感じていたんだなあ、としみじみ。
その毎日新聞の朝刊社会面にこんな特集記事が載っていた。
「医療を問う 患者は人質」
かなり、刺激的な言葉が並んでいる。 少しだけ、抜き書きすれば、
>「5万円だと受け取ってもらえない」、
>ベテラン看護師は、主任教授が「最近、金額が減った」とぼやくのを耳にした。難しい手術の前、家族から20万円を差し出された医師は「僕の技術はこんな金額じゃ買えない」と、怒って断ったという。
>「うちだけ払わないで手術に影響があったら、取り返しがつかない」
>先天性の心臓病で息子が10年来、女子医大病院に通う母親は、外科の主治医に手術前の説明を受ける時、看護師から必ず念を押された。「先生に質問してはだめよ」
うーん、と考えてしまった。はっきり言って、この取材内容が、 常識であると、どうしても思えないからだ。
果たして、お医者さんに謝礼を払わなければ、ちゃんと診て もらえないんだろうか?
これは、自分の経験であるが、つい先日まで、病院で働いて いた事もあり、患者さんや、その家族から、謝礼をもらうことも 結構あった。
原則的に、自分の働いていた病院で患者さんから個人的に何かを もらうことは禁止されている。 「だから、その気持ちだけで結構ですよ」とは言っても、日本的な 風習のせいか、患者さんも、その謝礼を下げることはないので、 慣例的に受け取る事も多かった。
もちろん、患者さんとしては、ここで謝礼を払うことで、特別 扱いをしてほしい、って気持ちもあったんじゃないかな、って 思う。
ただ、個人的には、謝礼をもらったからといって、その患者さんを 特別扱いをすることは決してなかった。 何かをいただこうが、いただくまいが、分け隔てなく、 その患者さんに対して自分が出来ることをしてきたつもりだ。
何故なら、患者さんには、誰でもよりよい医療を受ける 権利があると思うから。
また、もらったお菓子なり、お金なりは、そのままスタッフで 分けたり、プールして、たまの飲み会なんかに、ありがたく 活用させてもらった。
だから、あくまで個人的な経験でいえば、お医者さんに謝礼を したかどうかで、治療法なり、診察が、変わることはないんじゃ ないかな、と思っている。
逆に、例えば生活保護を受けているような患者さんから、決して 少なくない謝礼を受け取って、こっちの心が痛む事もあったし。
今回の女子医大の医療過誤事件にかぎらず、最近では多くの 医療過誤事件が報道されている。
病院で働いていた経験で言っても、医療現場でミスが全く 起きないなんて事はなく、大なり小なり、ミスは必ず起きる。 些細なミスのせいで、患者さんが残念ながら、死んでしまう例は これからも起きるだろう。
自分なり、自分の家族なりがもしも、病院に入院したとして、 医療過誤に巻き込まれないようにするには、果たしてどのように すればいいのか?
個人的には、金額の大小よりも、そこの病院スタッフと、なるべく コミュニケーションを取ることの方が、そうした過誤を防げるよう に思うのだ。
つまり、ワンオブ患者の1人、として機械的に処理されないように 少なくとも執刀医とは、コミュニケーションをとるのに 越したことはない、と思う。
医師サイドでも、ああ、この患者さんは、と少し意識をするだけで 注意力が増し、ミスを犯す可能性は減るような気がするのだ。
また、大きい病院でも、小さい病院でも、医療スタッフ間で コミュニケーションがちゃんととれている病院の方が、 おそらくは、医療過誤のケース自体少ないか、深刻なものは 起きないような気がするし、そういう病棟は、大抵 活気があるように思う。
もっとも、医者、看護師や、パラメと呼ばれる、検査技師や PTなどの医療従事者の間で、業種をこえてコミュニケーションを とるのは結構困難な事だったりするんだけど。
今回の、毎日新聞の報道が、もしも本当であったとしたら、 謝礼の大小で怒る医師や、事前に質問をしたら怒る医師が本当に いるんだとしたら、その医師が、どんなに有能な医師だったと しても、手術には同意しない。
と、きっぱりと言えればいいんだけど、問題が人の生命に 関わるだけに心境は複雑である。 実際に、この人でなければ、このオペは成功しない、なんて 場合になったときはどうするのか?
それでも、謝礼がなかったからといって、医師として、まさか 手抜きをすることはないと思うんだが。
自分自身で言えば、どんなに多額の謝礼よりも、患者さんが よくなって、ありがとうございました、という感謝の言葉の 方が、なによりも励みになると思う。 そして、おそらく大多数の医療関係者が、同じような態度で 働いていることを切に願う。
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