前回の日記で、北村薫の「六の宮の姫君」を取り上げたんだ けれど、 続編が読みたくなってしまったので、つい本棚から引っ張り出して 読んでしまった。
北村薫著、「朝霧」(東京創元社刊)。残念ながらまだ文庫本化は されていない。 これはある意味、部屋のそうじをはじめたつもりが、いつの間にか 昔はまったマンガ本を全冊読んでしまった状態に、似ているかも しれない。
個人的には、昔読んだ本をもういちど読み返すのって結構、 好きだったりする。 昔、気になった文章に再び出会うと、なんか懐かしい気持ちが よみがえって来たりするし。
「朝霧」を最初に読んだとき、自分の心にひっかかった言葉は 以下の文章である。 「いやだなあ、僕は。―いいかい、君、好きになるなら、 一流の人物を好きになりなさい。―それから、これは、 いかにも爺さんらしいいい方かもしれんが、本当に いいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ。」
この文章に最初に出会った時の自分は、もうすでに学生では なかったけれど、まだ世間に出たばかりの柔らかな心を 持っていたのかもなあ、と感慨にふけってしまった。
たかだか数年前のことなのに、人が年月を経ていくうちに、 忘れてしまうものって、色々と存在している。
本に限らず、昔書いた文章なんてのを読み直すと、その当時の 気持ちなんていうのもよみがえってくる。 なんとなく、まぶしいような、くすぐったいような気持ちを 思い出させてくれること。 本にはそんな効用もあるような気もするのだ。
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