2008年12月24日(水) |
081224_世界で最もましな日本 |
今日はクリスマス。少しは元気の出る記事がないかな、と思っていたらブルームバーグという経済専門のサイトに日本が世界を倒すかも知れないという記事がありました。 11月17日の記事なのでちょっと古いのですが、ご覧ください。訳が見つからなかったので自分で訳しました。文責は私です。
内容は、欧米に比べると日本の金融は堅調、企業体質もリストラを進めてきたために健全、家計にはたんまりと預貯金がある。これに政府の景気刺激策があれば日本人はそれほど消費を落とさないのではないか、という楽観論が展開されています。
そのうえで、そうした堅調な財務体質で世界のライバルたちを買収してシェア確保に乗り出せるのではないか、という趣旨です。1ヶ月後の今としてはもう少し状態は悪そうですが、大きな目で世界を俯瞰すると「まあ一番ましなんじゃないの?」ということでしょうか。
※ ※ 【以下拙訳】 ※ ※
『日本の「最も醜くない」経済は危機にあるアメリカと欧州を倒すかも知れない』 by Jason Clenfield 11月8日 原文はこちら→http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601109&sid=aq0Je8ySdG3A&refer=home
日本が最近宣言した不況は世界で二番目に大きな経済が最終的には欧米欧を上回ることを示すチャンスになるのかもしれません。
西側諸国が大恐慌以来最悪の経済危機に直面するのに対して、来年の日本の経済はほんの少し縮むだけでしょう。
ほぼ20年にわたる標準以下の低成長と、ビジネスと消費における負債に対する嫌悪感はほとんど余分なもののない経済をもたらしました。国の銀行は現金が有り余っていて貸し出すことが可能で、トヨタ自動車のような輸出企業は効率を高め、家計資産は経済の下降局面でも出費を抑えるべきというくらいたくさんの貯金を持っています。
富士通研究所の主任エコノミスト、マーチン・シュルツ氏は「経済、企業と家計はリストラのプロセスを経てきたのです」と言います。「日本経済は他の国々と同じように再調整をする必要がありません、なぜならそれほどバブルになっていなかったからです」
OECDは、国内総生産はアメリカが0.9%、欧州が0.5%も縮むのに対して日本では0.1%の縮小で棲むだろうと予想しています。それはイギリス工業連合によるイギリスのGDPは1.7%下がるだろうという予測とは雲泥の差なのです。
昨日日本の内閣府は、GDPが9月30日までの第2四半期に、第1四半期に比べて0.1パーセント縮小したと述べました。これはユーロ圏15カ国の0.2%相当、アメリカにおいては0.1%に少しとどかないくらいの収縮に匹敵します。
【美人コンテストではなく】 「もはや(どれが一番良いかなどという)美人コンテストではなくて、一番酷くないものを選んでいるのです」と、東京に拠点を置くヘッジファンド、TRJタンタロンの最高経営責任者ジェスパー・コル氏は言いました。 「日本には周期的な不況はありますが、アメリカは構造的な不況なのかも知れません」
日本の相対的な健康は過去の酷い時期から生じています。日本企業がニューヨーク・ロックフェラーセンターというすごいものを買うような20年前のブームが去った後、日経225株式指標は9年間で67パーセントもの価値を失い、地価は半分に下落し、不良債権は銀行を壊滅の縁まで追いやりました。
日本は10年にも及ぶ不調に苦しめられ、2001年には " Can Japan Compete?(日本はまだ参加出来るのか?の意味)" (邦題「日本の競争戦略」) という本が出たほどでした。そこで国は企業に対して負債の処理と共に投資と雇用の抑制を促しました。
今や余剰生産能力を計る主要中央銀行指数は9月に2を示し、これは2002年3月に33のうち12が年初来高値を示したのに対しています。
東京証券取引所の企業リストのうち約4分の1は10年前に負債が6%あったのに対していまや負債のない企業となりました。敢えて名前を挙げるとすれば、ゲームメーカの任天堂や日本で最大の製薬会社である武田製薬などです。
【ローンの保証金】 日本の銀行は、彼らのローンの三分の一以上の保証金を持っています。1990年代鋼板の銀行と証券会社倒産の後ではバランスシートの改善に忙しかったため、貸し手たちもウォール街を壊滅させた危険な投資には近づこうとしませんでした。 日本の銀行のサブプライム関連の損失は合計でもせいぜい155億ドルで、バンク・オブ・アメリカ資本でノースカロライナに拠点を置くシャーロット銀行に単独で登録されているものの半分ほどにしか過ぎません … さらには、ブルームバーグによれば世界全体の2%ほどでしかないのです。
「銀行はグローバル化されませんでした。それは彼らにとってはまぐれ当たりのようなものですが、全ては相対的なものです」と言うのは「Can Japan Compete」の共著者でもある一橋大学商学部教授の竹内弘高教授です。 「日本の銀行はその結果有利になるかも知れません、まさに『ウサギとカメ』のようなお話です」
【海外を買う】 国の貸し手が比較的強いことで、彼らはアメリカや欧州のライバルの中で権益を安く買う立場になりました。三菱UFJフィナンシャルグループはリーマンブラザーズ社の崩壊後価格が4分の1下がったモルガンスタンレーの21%を買いました。
確かに銀行は10月以来日経平均の24%急落を受けました。株式投資に関する損失のために三菱UFJとみずほフィナンシャルグループ(国の最大手銀行二社)も資本補充のために株式を売却せざるを得なくなりました。
ブルームバーグによると、今年のこれまでの価格急落と円の上昇によって、日本企業による外国企業乗っ取りの価値は、3倍以上となりました。武田製薬に至っては、マサチューセッツ州にあるケンブリッジ社を買い取るのに89億ドル(=8千億円相当)を現金で購入したのです。
金融会社と製薬会社が買い込みに浮かれているのに対して、メーカーは世界的な減速という大変な時期と折り合いをつけながらライバルたちからマーケットシェアを奪いつつあります。
【自動車ローン】 AAAの格付け債権を持つ唯一の自動車メーカーであるトヨタ自動車はその信用を利用してアメリカの自動車購入者に対して無利子のローンを提供しています。ゼネラルモーター社とフォード社、クライスラー社が資金調達コストの上昇に伴って縮小しつつあるのを横目に、このトヨタの戦略はアメリカにおけるシェアを2%押し上げて10月までに18%に達しました(オートデータ社調べ)。この間GMはシェアを五分の一下げました。
しかし日本といえども世界的な不況から逃れることはできません。過去6年間に渡る成長のほとんどは輸出によってもたらされたものであり、欧米の減速はやはり被害をもたらしています。
「日本もかなり直接的な問題を受けています。輸出偏重による不況を経験している真っ最中といえるでしょう」というのはマッコーリー証券チーフエコノミストのリチャード・ジェラム氏。「確かにそれは酷いのですが、特別に込み入った問題と言うことではありません。なにしろそれ以外の世界各国はその上に金融システム災害が差し迫っているのですからね」
日本の消費者には他の国々よりも不況の度合いが浅いかも知れないもう一つの理由があります。預貯金のクッションとインフレが下がっていること、さらに政府による2兆円もの刺激策は日本国民の家計がアメリカ国民ほどにはそうそう消費を落とさないことを意味するでしょう。 日本の消費が年間ベースで落ちたのは過去15年間でたった一度きりなのです。
1997年以来賃金が10%以上も低下した後だというのに、OECDによれば日本の家計は昨年収入の3%を貯金出来たというのです。売り上げの低下で家伝小売業者のサーキット・ストアズが倒産をしたアメリカでは預貯金率は0.4%なのです。
「日本には本当に預貯金があるのです」TRJ証券のコール氏は言います。「アメリカが本当に怖いのは、典型的な中下流階層にはそうしたゆとりが全くないことなのですよ」
※ ※ 【訳終わり】 ※ ※
相対的に一番ましな感じが出ている…というよりは、世界はもっと酷いんだという視点の紹介でもあります。
日本人は世界の人たちがみんな日本人と同じだと錯覚しがちですがどうやらそうではなさそうです。日本人の内側からの評論よりも世界から見た日本の評論の方がどうも信じられそうなのですが。
それでは、メリークリスマス!
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