2008年10月25日(土) |
081025_風神雷神 |
上野の国立博物館平成館で開催中の「大琳派展」を見てきました。
琳派(りんぱ)とは画家であり工芸家として知られる尾形光琳(1658〜1716)によって確立された絵画工芸の独自のデザイン世界のこと。今年は尾形光琳の生誕350年なのだそうで、それをきっかけにして尾形光琳の芸術のルーツから、彼が生み出したものの継承者にスポットを当てた企画展というわけです。
企画展では尾形光琳芸術のルーツとして、俵屋宗達(生没年不詳)と本阿弥光悦のコラボレーションから説き起こします。なんと尾形光琳の曾祖父の奥さんは本阿弥光悦の姉なのだそうで、光琳と光悦は遠い親戚にあたるのです。
尾形光琳は弟の尾形乾山とともに、父から莫大な遺産を受け継いだのですが、堅実な乾山に対して光琳の方は大の散在家だったよう。遺産をたちまち食いつぶして、逆にそのために絵を描くことを仕事にしたといいますから、世の中まさに『禍福はあざなえる縄のごとし』です。
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尾形光琳は俵屋宗達とは直接の師弟関係にはありませんでしたが、その画風には大きな影響を受けていて、宗達の有名な風神雷神図屏風(国宝)を模した風神雷神図屏風(重要文化財)が伝わっています。今日はこれに一番の感動です。
今回は残念ながら宗達の原画は展示されていませんでしたが、光琳とその弟子鈴木抱一の手によって構図をそのまま模した屏風が展示されていました。
光琳の屏風絵は本当に素晴らしかった!そしてそれ以上に、この構図を生み出した俵屋宗達の独創性に感服しました。風神と雷神を屏風全体の中にダイナミックに配置し、しかもやや滑稽かつ躍動感あふれる動きの一瞬を捕らえたこのセンス!感動です。
【俵屋宗達画(国宝)風神雷神図】(絵はがきをスキャンしたもの)
【尾形光琳画(重要文化財)風神雷神図】(絵はがきをスキャンしたもの)
この風神雷神図は鈴木抱一も模写をしましたが、抱一はさらに、光琳の描いた屏風の裏に夏秋草図屏風という絵を描いていました。今は別々の屏風として展示されていましたが、風神の裏には風で飛ばされるツタの葉を、また雷神の裏には突然の雨を受けて萎れる夏草を描くという、これまた絶妙な洒落っ気ではありませんか。本当に目の保養になりました。
【鈴木抱一画(重要文化財)夏秋草図屏風】
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琳派と呼ばれる作品の数々を見ていて、特に大きな絵が残されていることには、日本の屏風や襖(ふすま)という調度品の存在が大きいと改めて感じました。
日本人は芸術を初め、もの作りを細かく小さくすることに長けていて、小さい世界が得意だと思われがちですが、大きな場を与えられるときにも非常に独創的でクールな感覚を発揮するものです。
そして、祖先が残してくれた芸術の数々を観られることの幸せと、日本人としてこういう芸術家たちの末裔であることの誇りを強烈に印象づけられました。
上野へ行く機会があったらぜひご覧になっていただきたいものです。
ちなみに、今発売中の「週刊世界の美術館」の特集が国立博物館で、表紙は同館所蔵の尾形光琳画風神雷神屏風図でした。まちなかで見かけたけれど偶然ですね。
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