掛川奮闘記

2004年05月02日(日) 040502_札響ブラスコンサート

【札響ブラス・コンサート】
 娘が吹奏楽でクラリネットを吹いているのだが、その子が「演奏会に行きたい」と言うのでチケットを購入しておいた。

 札響は財団法人という形を取って、札幌市などからも補助金が出ているのだが、ここ数年毎年赤字基調で累積赤字も数億円に達する危機的状況になっていたのである。
 財団法人であるということと、そもそもが芸術家集団ということで経営を論じることは下世話なことと言う体質が改善できずにいた。

 ここに昨年専務理事として就任したのが、知人のSさん。Sさんは組織改革をするために送り込まれたようなものなので、なにしろ今まで当たり前と思われたこと全てに大ナタを振るった。

 楽団員に対しては、「プロとしての自覚があるなら、一人ずつが100人の個人ファンを捕まえて来い!」とか「ステージに向かうその瞬間からがプロの領域だ」として、歩き方教室やメーキャップ教室のプロを招いて、見られることへの意味を徹底的に叩き込んだ。

 「その代わり、よく観られるようにしてやる」ということで、パンフレットや演奏者紹介などに使われる写真は全てプロの写真家に撮影させた。プロの写真は素人のそれとは全く違って見栄えが格段に上がったという。

 「演奏が終わったあとは、お客様をお見送りして感謝の気持ちを表せ」ということで自ら率先して、演奏が終わったあとに出口でお客様をお見送りした。
 「そこまでやるか。我々は演奏家のプロ、良い演奏ができれば良いのだ」と最初は白けていた演奏家たちの中からも次第に一人二人と見送りの列に加わる者が出てきたと言う。

 すると、単に見送るだけだったつもりで立っていたのが、出口でファンに囲まれて賞賛や感謝の言葉を浴びるうちに、自らが嬉しく思うようになったと言う。出口に並ぶのは、楽団や経営のためではなく自らの喜びとして感じられるようになったというのだ。
 演奏家と市民が一歩一歩お互いの距離を縮めていくさまが伺えて、興味深い。人を動かすのは叱責や恐怖だけではなく、結果の喜びをもたらすことが極めて有効なのだ。

 こういう不断の改革の結果、経営状況は飛躍的に改善され、それまでが年間2億円を越す赤字だったものを一年で1億円以上の単年度黒字に転換させたのだと言う。

 
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 そうした改革の途上で出てきたのが、札響という管弦楽団から管楽器を中心に編成したブラスバンドとしての演奏会である。今回は札響特別演奏会として、「札響シンフォニック・ブラス・コンサート」が札幌の中島公園内にあるコンサートホールKitaraで行われた。

 ブラスコンサートと言うことで、市内外の吹奏楽関係者の注目が大きく、学校単位での斡旋も多く、会場には吹奏楽を志す学生たちの姿が目立った。2千人入るホールもほぼ満席状態である。

 指揮は下野竜也さんで、演目は中原達彦さんという作曲家に委嘱した「ファンファーレ〜札響シンフォニックブラスのための祝典序曲」で始まり、デイヴィスの「ウェールズのうた」と続き、ここからの二曲が2004年度吹奏楽コンクールの課題曲という趣向。

 吹奏楽コンクールの課題曲は5曲のなかから一つを選んで演奏することになるのだが、今日はその5曲のなかから課題曲1福田洋介作曲の「吹奏楽のための『風の舞』」と課題曲4藤井修作曲の「鳥たちの神話」が演奏された。
 わが娘は学校でこの課題曲1を演奏することになったらしく、その関心が高かったようだ。

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 演奏の後半は、フルオーケストラによる演奏にかわり三曲が演奏された。しかも三曲目のレスピーギ作曲「交響詩『ローマの松』」では、地元の高校生から選抜されたトランペットやトロンボーンの10人が楽団の後ろ側の席で演奏に加わると言う趣向付きであった。

 こういう形で二千人の観客を相手にした演奏会で堂々たる演奏を披露できる子供たちは幸せだ。将来に非常に大きな財産を残すことになるだろう。演奏も大いに盛り上がり、会場からは拍手の嵐。

 こういう演奏が頻繁に開かれるというのが政令指定都市の実力といったところだろうか。なんとも大きな都市のうらやましいところではある。

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 演奏会終了後に、財団事務局を訪ねて知人のSさんに会うことができた。 

 うすうす感じていたことを口にしてみたが、「今回の演奏会は、大人4千円、学生は千円という破格の値段ですよね。Kitaraホールは2千人が入る音楽ホールですが、満員でも元は取れないのではありませんか」すると
 「それはそうですよ。でもこの部分は投資さ。こうやって底辺から札響に親しんでもらう地道な努力をすることが大事だと思うから、こんな試みもするのさ」とのこと。

 聞けば、財務状況悪化を理由に今年国からの補助金も切られようとしたところへ乗り込んで、財務省の担当者と交渉の末、補助金を復活させたと言う。 

 「ここへ来てから、それまでいた12人の事務局員をほぼ全員入れ替えたよ。人が変わらないとだめなんだな」とのこと。人が変わることでそれまで引きずってきたことも変えることができるという。
 改革と言うことはそういうことなのかもしれない。


 演奏もすばらしかったけれど、音楽会に行って元気をもらってきました。札響のますますの発展をお祈りしています。 
 


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