NHKの「お江戸でござる」で江戸の話をするときの日向子さんが大好きだった。 どうしてああまで無邪気な顔で、美しい日本語をたまらなく楽しく話せるのかといつも憧れを持って眺めていた。いつしか話の内容は聞かないままあの顔だけをただ見つめていたこともある。 その彼女がブラウン管に顔を見せることがなくなってどうしてらっしゃるのだろうと思っていた (彼女が何かのエッセイで病気だということを告白していたので病気のことは知っていた) そうして、彼女が亡くなったことを知ってもう1年以上が過ぎた。 思い出して著書「4時のオヤツ」を読んでいる。 ほとんど会話でできている。 読んでいるととにかくいろんな事が懐かしくなってくる。 4時という時間はとても中途半端な時間。 夜明け前で、夕暮れ時。 ほんのちょっと小腹が空いて何かをつまみたくなるけれど食べ過ぎると大変。 けど、そのホンのちょっとがおいしい時間。 日向子さんは33篇の短編をエッセイのような感覚でサラリと書いている。 ほんの少しの時間の少しの言葉。 けど、もう二度とは戻ってこない時間。 やっぱりいいなあ。 今、彼女は空の向こうで熱燗を飲みながらあのにこやかな顔で地上を見てるんだろうな。 「そんなに急いだって、泣いたって、怒ってたって、何事もいずれは失われることになるのよ。 のんびりなさい」って・・
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