毎朝,バスでいっしょになるおばさんがいる。 年齢は65歳を過ぎたくらい バス停から職場までほんの7分くらいだけど,話をする。 とにかく元気で,実に堂々と歩いていく。 小さくなっていては駄目。胸を張って歩かなくては。 など,教えられることばかり。 その方の青春時代,結婚するときには,花嫁修業と いって、よそへ奉公へあがったそうだ。 その方は,大阪のサラリーマンの家庭だったという。 一年くらいの奉公の間に,あらゆる家事を教えてくれたそうだ。 料理,掃除,果ては布団の作り方まで。 そのため,結婚してからとても役に立ったという。 私が,まだ小さかった頃,そういえば,母が布団つくりをしていたのを思い出す。 綿を均等に並べて,最後に真綿をそっとかけて, 布団の端のところをしっかりもちなさいと持たされ, ひっぱりっこをするのだ。そのときうっかり離してしまうと、 もう一度,やり直し。 その頃は,綿が鼻に入るし,面倒だなと思っていた。 そして,もう思い出すこともなくなった今, その方と話をしながら思い出した。 今は,布団は買うものだと思っている。 あの頃の小さかった自分は,母の苦労も知らず, 貧しいことの意味も知らず、でも, それなりに幸せだったのかなともおもう。 今日も,母は電話をしてきた。「特に用はないのだけれど、水曜日だからと」 私が一人暮らしだからと,いつも気にしているのだ。
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