結婚と不倫と離婚の間
蒲公英



 離婚を考える時 (3)

私は里帰り出産でした。

実家は住居地から400kmほど離れたところでしたが、(元)夫の運転なら車で5時間弱で行き来出来ました。

当然、「産まれる!」という時には駆けつけてくれるものと思っていました。
産気づいてから連絡をして、出産のその瞬間には間に合わなくても、連絡を受けてすぐにこちらに向かってくれれば良いと思っていました。

(元)夫の宿泊の準備とかもあるので里に帰る前に確認しました。
「連絡は産気づいてからで良いよね。」
「平日でも一泊くらいは出来る?」
「うまい具合に週末だったら良いね。」




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今こうして思い起こせば、(元)夫の言いようも分からないではないですが、当時妊娠中の私にはひどくショックでした。

それでも確かにどうしても抜けられない仕事が入ることもあるかと、その時次第だと思い直し、「出来るだけ早く」と言うことにして、臨月を向かえ、実家に帰る事にしました。

そろそろ予定日となったころ、入院予定の病院で、
「今、家族のベッド付きの特別室が空いていますが、どうされますか? 予約可能ですが?」と尋ねられ、その旨を(元)夫に伝えました。

やはり、
「多分いけないよ。会議とかあるし。」
「え? 産まれても来れないの?」
「うん、多分、無理。 入院一週間だっけ? 週末には行けると思うんだけど。でも、日帰りだな。」
予定通りの答え。
「じゃ、普通に二人部屋にしてもらうよ、良いね。」
「うん、良いよ。」

仕事のために(元)夫はすぐには来ない、この事は、もうそれで良くなっていました。

そしていよいよ産気付いたのは木曜日の午後。
両親は仕事中だったので、私は予め準備していた入院セットをを持って自分で車を運転して病院に行きました。
(元)夫はまだ会社に居る時間だったのですぐには電話せず、夕方、痛みの合間をぬって自宅に電話しました。

「産気づいたんで、今日午後入院したよ。産まれるのは明日の明け方だろうって。 やっぱり週末まで来れないんだよね?」
「うん、明日も会議あるからな。明日の夜こちらを出て、そっちに向かうよ。」
「うん、じゃ、実家に一泊してく?」
「うん、そうだな・・・日帰りで帰るよ、仕事あるし。」
「分かった。」

期待通りに週末に産まれてくれたのに、一泊もしないで帰るという(元)夫。
でも、仕事だからしょうがないか。

お産は比較的軽かったと思いますが、それでも、無事出産を終えたのは、助産婦さんの予告どおり翌日の明け方3時でした。

待ちに待った子供との初対面はそれはそれは感動的でした。
身体は疲れていましたが、気持ちが高ぶっていてとても眠れませんでした。
母は私の傍らで、静かに、私が産まれた時の話をしてくれました。
本当に感動的で幸せに満ちた時でした。

でも、ふと、その場に(元)夫がいないことを寂しく思いました。
仕事だから仕方ない、明日の朝には来てくれるのだから、それで良しとしよう、そう思いながら少し眠りました。

出産後はその直後から忙しく、決められたスケジュールにそってやらなければいけないことが次々ありました。
慌しく予定を確認している間に、一時帰宅していた母と父が来て、言葉を交わす暇もなく、二人はいそいそと新生児室を覗きに行きました。二人にとっては初孫でとてもうれしそうでした。

病室に母が戻ってきて、「○○さん(元夫)、今日昼過ぎにこっちに着くって。」と言った。
「え!? 明日じゃないの?」
「なんか、仕事の都合ついたらしいよ。」
「やっぱりね・・・。仕事なんて、頼めば何とでも都合つけれるのよ。それなのに、仕事だからこれないとかずっと言い張っちゃって・・・なのに今度は急に来れるって・・・泊まる準備とか、こっちも困るよね!?」
「いや、別に、うちに泊まってもらう分にはいいけどね。」
母は、特に気にせずそう言っていましたが、私は(元)夫の予定外の行動が無性に腹立たしく思いました。

そうこうしているうちに午後になり、(元)夫が到着した。
まずは新生児室に行き、(元)夫はおっかなビックリで生まれたばかりの小さな子供を抱き、幸せそうに目を細め、私には「ご苦労様。ありがとね。」と声を掛けてくれました。
さすがに私もその時には、予定外の(元)夫の行動を責める気もなく、新しく家族が増えた幸せをしみじみ感じていました。

しかし・・・

それから病室に戻ってからの(元)夫の言動は、私をひどくがっかりさせるものでした。

まずは、病室が2人部屋である事に「落ち着かない」と文句を言い、個室なら母子同室なのが、二人部屋では子供は新生児室で、ガラス越しに眺めるしか出来きず、病室に戻ってもベッドの横のパイプイスに座っているだけで、「退屈だな〜」と言い出しました。
ちょっと出掛けてくると、病院側の書店で車の雑誌を買って来て、食事時、病室前廊下まで運ばれて来た食事を部屋に運び入れる私に全く気付かないかのようにずっと本を眺めていました。
ここで、私はブチ切れました!
「貴方、一体何のためにここに来たの!? ところで、会議はどうしたの? 来れないと言っていたのに何故来たの!?」
「いや、会社で何気に子供が産まれたんだと言ったら、そりゃ会議どころじゃないから行ってあげなさいって。明日行くから良いといったんだけど、すぐに行ってあげなきゃって、会議は◇◇さんが変わってくれて。」
「で、別に今日来る気はなかったのに、会社の人に言われて何となく来たんだ。 だから、事前に相談すれば、会議なんて誰かが変わってくれるって言ったじゃないの、もっと計画的にやってくれれば病室も個室に出来て、子供と三人でゆっくり過ごせたのに・・・大体、退屈って何よ! お隣の(ベッド)の旦那さんなんて、朝からずっと、さっきも、ガラスにへばり付いて赤ちゃん眺めてるよ。 こんなとこに来ながら、歩くのがやっとの嫁の食事の介添えもしないで車の雑誌なんか読んでるじゃないわよ!」

ちょど、お隣さんが部屋にいなかったので思いっきりブチ切れました。

気まずく、居づらく夫は「いてもやることないし、邪魔みたいだから帰るね。」と言って、ほんの数時間の滞在で帰って行きました。

それから数日の入院生活の間、私はずっと、子供を抱くたびに、「この子は私一人の子供だ!誰(元夫)も頼らずに一人で育てて行くんだ!」と思いつめていました。出産後の不安定な時期で、そうなるのも仕方なかったと今も思っているのですが、私も少し言いすぎだったでしょうか?


2007年09月02日(日)
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