くじら日誌
温かい、紅茶を傍らに。
穏やかで何もない日々だけれど。
せいいっぱい、生きよう。

2005年06月02日(木) 目に見えぬもの

「疲れたときはこれを食べるといいよ」と、
閉店後にうすいさんがエプロンのポケットからチョコレートを出した。
苺の甘い香りのする甘いチョコレート。

だだをこねた子供をあやすみたいに、
うすいさんはわたしを癒してくれるな、と思った。
ほんの小さなチョコレートが、「うすいさんがくれた」ことで
何倍も美味しく感じて、不思議と笑みが零れた。
魔法みたい。


わたしはそうやって、癒されてばかりで、与えてもらってばかりで、
わたしはうすいさんを癒したり、うすいさんに何かを与えたりできているんだろうか。
偶に本人に直接聞くこともあるけれど
「今のままで十分」と笑顔で返されてしまう。
癒すとか、物ではない何かを与えることとか、
目に見えないものは与えられた本人にしかわからないから、
わたしがうすいさんに与えてもらっている、かけがえのないものたちを
うすいさんはわかるはずもないように。
わたしの知らないところで、
わたしはうすいさんに何かを与えているのかもしれないけれど。

こんなちっぽけなわたしに、何が与えられるんだろう。

結婚が間近になりつつあるのに、
未だにこんなことを考えてしまう。

それはもう、開き直るしかないのか。
「あなたには、わたしが必要なの!」と。


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