403 Forbidden

2003年12月30日(火) ドキュメント1230

キスをして別れた後、まず一本煙草を吸うために外へ出た。
ゆっくりと昨日からのことを思い出しながら、封を開けたまま一本も吸ってなかった
煙草に火をつけた。
煙草が吸い終わる頃に、今日はもう会わないでおこうと決めた。

それからTowerRecordへ向かい、昨日会う前に探していた長井秀和のCDを買い、
その次に無印良品へ行ってそのCDを入れる袋と、メモ用紙を買った。
楽器屋の前のベンチでメモ用紙にメッセージを何度か書き直し、
CDと一緒に袋に入れてから彼女の職場へと向かった。
レジですぐに彼女の姿を見つけた。一度こちらを振り向いたような気がしたが、
すぐに視線を逸らして売り場を通り抜けた。
そしてぐるっと廻って彼女に悟られないようにもう一度だけ姿を確認して、
僕は店を後にした。

青空の中を歩く。時折、香水のような匂いがしていた。
駐車場まで行き、どうしようか悩んだ末彼女の車のワイパーに袋を引っ掛けた。
その姿がもしかしたら車上荒らしに見られるかもしれないな、と思い、
足早にその場を立ち去った。僕が駐車場を出るとき、恐らく店員であろう自動車が
来ていた。
帰り道で香水のような匂いは実は自分の着けた化粧水の匂いだと気が付き、
こういうときは何でもいいように解釈してしまうのだな、と思った。

一刻も早く僕は戻らなければいけない気がした。
店の前まで戻ると駅までのバスの時刻を確認し、いま出たばかりで次のバスまで
あと20分はあるということに少し気を落とした。
彼女の近くにいること自体に罪悪感を感じていた。
そして、バスが来るまでに彼女に会わないで帰る旨のメールを入れて、
すぐ携帯の電源を切った。このメールを見るのはいつなのか僕には判らないけれど、
見たら彼女は泣いてしまうのではないかと思った。
ようやく到着したバスへ乗り込み、駅まで着くとそこは昨日迎えにきてくれた場所で何故か苦笑した。

駅員に一番早く新横浜へ行く新幹線を聞き、切符を買った。
電車はまだ時間があって、僕はいたたまれず煙草を何本も吸った。
新快速が到着して、おっとコーヒーを買って落ち着きながら帰ろうと急いで
自動販売機へ小銭を入れると、なぜか100円だけ戻ってきてしまい
タッチの差で新快速に乗りそびた。仕方なしにすぐあとの普通列車に乗った。
電車の中でコーヒーを飲み終わると、できるだけ思い出さないように
本を読んでいた。

なにか食べておこうと新幹線に乗る前にサンドイッチを買ったが
新幹線の中で一口食べたら食欲が無くなった。
また体重が減るかもしれないな、と思った。
それからずっと眠っていた。新幹線の加速感が心地よかった。

新横浜について、ようやく少し平静を取り戻した。
空が同じように青くて、この空はつながっているのだろうな、と
センチメタルなことを思ったりした。
地下鉄にのると、急に涙が出た。

地下鉄を降りて、駅で撮った写真を現像した。
思ったよりよく写っていたが、真顔の自分が少し嫌だった。
帰り道に、だめだな、と思いつつ歩き煙草をして、
たとえ傷つけることになるのだとしても、
彼女にだけは今後絶対に嘘をつかないと決めた。
そして、彼女の知らない今日の僕をここに書き記すことにした。
夜には彼女はそれを読んで泣いてしまうのだろうと思った。

でもそれほど心配することはない。僕も今泣いている。
無事に帰ってきました。ただいま。

※置いてきたCDが無かったらきっと誰かに盗まれてしまったのだろうと思います。
 だったら残念。まあ、お笑いCDなので変に思い出になることも無いはずですが。


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