午後の昼下がりはドラマのように。

みなさん、こんにちは。
こんなこともあるんだな〜!とびっくりのやまぴぃです。

人生は筋書きのないドラマだ!と誰かが申しておりましたが
本日、まさにそのドラマのような出来事がありました。

これからその出来事を物語風に語っていきたいと思います。


ランチを終えて、席に戻ると営業くんが待っていた。
「やまぴぃさん、これをお客さんの所に届けないといけないんですけど
僕これから別件で出ちゃうんですよ・・・代わりに届けてもらえますか?」
仕事もちょうど一段落したところだし
届け先というのは顔なじみのお客さんの所だったので
僕はその依頼を引き受けた。

場所は銀座。電車でも行けるが歩いても20分足らずの所だ。
外はうだるような暑さだったが僕は歩いて行くことに決めた。


銀座、中央通り沿いの教文館前の交差点で信号が赤にかわった。
信号待ちをしていて何気なく向かいの歩道を見ると
同じく信号待ちをしている女性が目に入った。

どこかで見た顔。記憶のデータベースを検索する。

思い出せない。どこかの事務所で会った人かな?
それとも得意先の人だっけ?

じっと見ていたら、相手の女性も僕の視線に気がついたらしく
こちらを見返す。

彼女の細い目が大きく見開かれた。

その驚いた顔を見て僕も彼女の顔を思い出す。


十数年前の甘くて切ない記憶が鮮やかによみがえる。
その時付き合っていたYだ・・・。


そして信号が青に変わった。
彼女は目を見開いたまま立ち止まっている。
僕は横断歩道を渡り、彼女にゆっくりと近づいた。

「キースケ?」

近づく僕に彼女は聞いた。
僕はうなづいて苦笑した。
後にも先にも僕をそんなふうに呼ぶ女性は一人しかいない。
間違いない。彼女だ。

僕は微笑みながら近づき言った。
『久しぶり』

彼女も微笑みながら言った。
「久しぶり」

気がつかないはずだ。
記憶にあった黒々としたロングヘアーは栗色のショートに、
十数年前よりふっくらした頬に地味な服。
そしてやっぼたいからとあれほど嫌っていたメガネもかけていた。

しばらく、無言でお互いを見ていたのだが
往来の真ん中であることに気付き道端に寄る。

『元気?』
「うん・・・キースケは?」
『うん、ぼちぼち』
「そっか・・・」
『今日はどうしたの?』
「あ、友達と待ち合わせ。キースケは?仕事?」
『うん。今お客さんの所へ向かってたとこ・・・』

『なんかさ、こんなとこでバッタリ会うなんてドラマみたいだね』
「そうだね・・・キースケ変わんないね」
彼女が笑いながら言う。
『君も変わらないよ』
「うそ。もう、おばちゃんよ!」
『そんなこと無いって』

彼女の細い目がいたずらっぽく笑う。

「キースケ少し太った?」
『はは。ちょっとね。君もポッチャリしたんじゃない?』
と、頬をつつく。
「もう!!」
少しふくれてこちらを見上げる。

こうしてみると、ちょっとシワが増えたけど
その声も上目遣いにした時おでこにできるシワも
鼻の上のソバカスも昔のまんまだった。

君は変わってないよ。

また、しばらくの沈黙。
お互い十数年の時間を感じていたのかもしれない。

『そういえば、結婚したんだって?』
「うん・・・キースケは?」
『ああ、オレは縁遠くてね。いまだに独り身』
苦笑しながら言う僕を見て彼女はうつむきながら言った。


「ごめんね・・・」


『なんで謝るの?』


謝るくらいなら何であの時別れようって言ったのさ?
僕は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

「だって・・・キースケあの時結婚しようって私に言ってくれた・・・
でも、それを振り切って・・・私・・・」

『ああ・・・お互いに若かったからね。
オレもガキンチョだったし、君もそうした方がいいと思ったんでしょ?』

黙って、うつむく彼女。


僕は彼女の沈黙に耐えかねて話題を変えた。


『今は幸せ?旦那は優しくしてくれる??』
「うん・・・キースケよりちょっと口うるさいけどね」

寂しそうに笑いながら上目遣いで見上げる。
その目が何か聞きたそうにしてる。
聞きたいことは分かってる。

嘘をつくのは簡単だけど、そんなのすぐにばれる。
だから、僕は言った。

『友達と待ち合わせなんでしょ?引き留めちゃってゴメンね』
「あ、大丈夫よ。キースケこそ仕事大丈夫?」


僕は小さくうなずいて微笑む。


割れたコップから流れた水は二度と元へは戻らない。
君は新しいコップを見つけたようだね。
幸せそうで良かった。

でも、僕のコップは割れたままみたい。
きっとその破片がまだ刺さったままなんだ。

君が幸せそうなのはとても嬉しいけど、
それを見ているのもつらいから。
その幸せそうな笑顔を作ってあげることが
僕にはできなかったから。


特に急いでいたわけでもなかったけど、僕は時計を見て
『じゃ、そろそろ行くよ』
と言った。

「うん・・・元気でね」
『うん。君もね。』

彼女は泣き笑いのような笑顔でうなずく。

僕はきびすを返して歩き出した。
5・6歩あるいて振り返る
彼女は同じ場所に立ってこっちを見ていた。
僕が振り返ると彼女は小さく手を振った。
僕も微笑んで手を振り返す。

そしてまた、歩き出す。

少ししてまた振り返ったら、もうそこに彼女はいなかった。
立ち止まって人混みを探してみたけれど
それらしい人影はもう見えなかった。




もう、二度と会わない人だと思っていたのに・・・




十数年前の切ない想い出は今も変わらないままだった。



↓過去日記(別名「恥さらし」ともいう(笑))もついでにどーぞ♪
2001年07月23日(月) いいかげんにしてよね〜!!(ー"ー )
2002年07月23日(火)

幾瀬の星の煌めき / やまぴぃ

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