あお日記

2002年11月12日(火) 最後の手紙


 卒業してすぐの夏はそこにいっちゃんがいないこと以外は前年と状況においてあまり変化はないように思った。熱っぽさを失ったそれら友人たちの集いをどうしても比較してしまう自分がいた。もうすぐ1年が過ぎるというのに、相変わらず私はいっちゃんのいない環境に慣れることが出来なかったようだ。

 後輩たちが文化祭の準備に追われるであろう2学期の始め、残暑の厳しい日々だった。すでにOBとなった私がそれにどれだけ関与していたのか分からないが、おそらく何回かは部室へ足を運んだだろう。私の来訪を無邪気に喜んでくれるハマちゃんを初めとする後輩たちに対する私の笑みはとても乾いていた。


 結局は自分の中に閉じこもったままで周囲に本心を明かせずにいた自分自身がすでに彼女を痛めつける存在だった。物心ついたころからの願いであった自分の望む恋愛を具現できる相手であったと思う。ただそれに気付かなかった私は自分の中で彼女の存在を「友人」としておきたかった。特にいっちゃんが目の前に現れてからはその気持ちが強くなったように思う。了見の狭い身勝手で想像力に欠けた片付けようだ。

 
 嶋さんがくれた最後の手紙は、人見知りでシャイな彼女にとって最大の譲歩を書き記したものだった。当時の私は正直あそこまで書いて返事をくれるとは思ってもいなかっただろうが、その好意に対して私は反意することはなかった。私は嶋さんの好意に相応しい人間ではなかった。自分でそう思えばそこから先へは動けないのだ。

 その好意に対して私も最後の手紙を嶋さん宛てに書いた。人と縁を切るにはその人が呆れかえる位のバカバカしさ、多少の悪意をちらつかせた言葉で相手を攻撃すればいい。嶋さんがキズつくであろうその文面を書いている時の私にどれほどの良心があったのか分からないが、今ならそんな手の込んだことなどせずに自然消滅を図るだろう。まあ自分に多少の自信を持てるようになった現在ならそんな必要もないだろうが(笑)。

 夜の闇が深くなった時間に手紙を投函するため、なぜか本局へ自転車で行った。そのまま漕いでいけば嶋さんの家へはあっという間に着く距離だ。なかなか投函できずにポストを焦らす私の後ろを何台もの自動車がやってきては走り去っていったあの夏。



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