あお日記

2002年09月27日(金) 捨て犬


 確か高2の授業が全て終わった春休みも間近な頃だったと思う。その頃うちのロンはかなり老け込んできて、もともとうちに来てすぐにまつ毛や髭は真っ白。それが一段と目に見えてきた時期だった。高3の夏頃は散歩で歩くのも儘ならず、母がよく抱えて帰って来ました。今思うとかなり無謀でしたが、ロンは散歩といっても私も含め家族がぐうたらで、そのうち誰も行かなくなったのは、どういった理由からか、ロンは綱から放すとすっ飛んで出かけていって夕飯時に帰ってくるようになっていた。今思うと、それは愛すべき飼い犬を持つ飼い主の像ではない。それでも私はロンがいなくなった日から今で言う「ペットロス」のような感じになったのだった。まあ勝手なものです。


 でその春、昼過ぎには学校が明けて、いつもどおり早々にチャリで帰宅していた。その日は三寒四温の寒い日のほうで晴天ではあるものの北風が若干吹いている日。いつものように帰りはその北風にブツブツと呪いの文句を浴びせながら漕いでいたはずだ。
 私の町に入る境はかなりの田舎道で周囲は畑と杉森である。限りなく人工物は少ない。そこがまた下って登る箇所でありいつもどおり下りで加速をつけて登るのだが、瞬間的に強く吹く北風に抵抗しても登りで限りなく静止画になってしまう図はいつものことだ。

 で、えっちらと登り終えてからいつもと違う違和感に気付いた。チャリから降りて振り向いてもいつもと変わらないが、確かに何か違う、そう思った。で、渋々ではあったが今登った坂をまたゆっくり戻った。

 下り終えるかそこいらあたりの右側の森の中から微かに聞こえた鳴き声は、明らかにまだ生まれ落とされて間もない子犬が5匹ほど、粗野な段ボール箱のなかで寒風に寄り添うように震えていた。




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