危険域。 Master:(c)夏目

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2004年06月15日(火) ■
 「下妻物語」

 

 
 
 
 学校の冷房が寒すぎて、最近スカートは長いしカーディガンを着込んでるし、まるで真冬のような格好しているでも半そで夏服の夏目です。
 マジで寒いです。
 今の席、かなり冷房直撃です。
 冷暖房は確かになくては辛いものですが、加減を知れ加減を。
 頭痛いし…。


 パソコンの授業で、タイピングのテストがありまして。
 同時に、アルバム用の写真撮影のためカメラマンがパソコン室に入ってきました。
 学校専属のおじ様なんですが、中々愛嬌のある優しげな顔をなさってます。
 ってか、アルバム用の写真撮影がはじまってから、クラスに入ってくるたびに夏目を至近距離から撮影していくので…困っております。だって、普段は絶対しないような真面目な態度で、右手に筆記具、左手に教科書開いたりして、先生に向かってにこやかに質問やらしているような姿を見せなければならないんですもの。
 いつもならば、だらけて机の上に突っ伏して、筆記具は机の上に転がし、教科書は開けずのノートだけ置いて黒板に書き溜められたら写すと云った具合で、気が向かないと教師に声すらかけないような授業態度なんですもの、夏目(ヲイ。
 しかしながら、これでいて一応、生徒会長なんてものをやっているので、どうしても写真を撮られるのですね。何に使うのやら、ありのままを映せばいいものを…と思うのですが、どうにもそれだと学校側に色々と問題が生じるらしい(当たり前
 と云うことで、カメラマンが入ってくると机の上を片付けてさも真面目に授業を受けているかのような態度を取り、あまつ、かなり至近距離で狙われているのにも気がつかないふりをして授業を受け続けなければならないと云う、かなり苦痛な日々が続いているんです。
 さて、本日あったタイピングのテスト。十分間でどれだけ文字を打てるかと云うものです。予め決められた文章を打って行くもので、ひとつに460文字から成り立つ文章が二つ、全く別のテーマで印刷された紙をパソコンの脇に立てて、それを見ながらえんやこらと、打てるだけ打ち込んでいくのです。
 目標は950文字以上。
 最高記録は924文字。
 よっしゃ勝負じゃと誰に勝負し掛けているんだかわからない状態でキーボードに指をスタンバイ。
 コツは予め文章を読んで内容をおぼろげでいいから理解しておくこと。そうすればおのずと指が勝手に動き出す。
 よーいスタートの声と共に、まずは「陸上」の文字から入る夏目。画面は一切見ない。大抵、他クラスでも同じ内容をやっているものだから、変換については他クラスのものをパソコンが記憶しているはずと、ワード愛好者としては思ってみたり。まァ実際はその通りなんですが。
 それでも、ある程度打ち込み終わると誤変換がないか、若しくは打ち込みでおかしなキーを押していないかとチェックのために画面を見て、直したりまたは直さずにエンターで決定したりとか色々と作業を進めながら次の文章に入るわけです。
 さて、カメラマンは教室内をうろうろと回り、適当(じゃないんだろうけれど)にシャッターを押して、バシバシ写真を撮っていきます。
 取り敢えず生徒側としては実技テストの真っ最中なので、他はどうか知らないですけれど、夏目は己の新記録を出すために格闘中でしたの。かなり真剣でしたの。パソコン初心者クラスと云われるこのクラス内で、例えダントツにタイピングが早かろうとも、それは夏目には関係のない話。自分との闘いに他者は関係ないのさ。
 
 おーしおし、いい感じ。この調子で行けば一巡できるな。

 と、ふたつある文章を全て打ち終わりひとつ目の文章に戻れるだろうなと云う勝利を示した調子のよさでどんどこ打っている最中、カメラマンが夏目達の前に!!
 幸い、夏目は出席番号が十番なので、向かい合わせに並べられているパソコンディスクの前にはパソコンが置いてない。何故か、一列目にはパソコンを(置いてないこともないんだけれど)置かず、二列目からパソコンを使用している不思議な空間。なので、目の前には誰もいない。だからこそちょっと集中できる空間かしら。
 シャッターチャンスを狙っているのだろうか、カメラマンは案の定、カメラを構えて夏目とその隣(ツーデスクワンセット)をカメラにおさめようと虎視眈々と狙っているのです。
 ンなことされたら集中できなくなるじゃんとかお思いでしょうが、何の因果か、入学して以来、写真撮影に慣れちゃった夏目はそれくらいは平気。なんたって至近距離ではない。
 平然とキーボードを打ち続ける夏目の隣のかなり異色なクラスメイトは、完全にカメラから顔を背け、すでにタイピングを放棄。云っちゃなんですが、彼女、カメラマンが映りがいいとか云って被写体に選ぶほどの面ではありません、寧ろ拒む顔です。はっきり云って、カメラマンの狙いは夏目です。
 ひとつ目の文章をさっさと打ち終えた夏目は、集中力が途切れがちになるふたつ目の文章に移りました。もう、早いところ打ってしまわねば、夏目の集中力は夜店の金魚すくいの膜よりやわい。その上、根性は氷より不確か。
 しかし、なんの嫌がらせか、カメラマンはちょうど集中力の怪しげなその時間を選んで、至近距離でカメラを向けてきたのです。
 座った状態で斜め左の位置。振り返ればカメラレンズが当たるんじゃないだろうか、裏拳で届くような位置です。かなりの至近距離。
 
 ぎゃーやめてー。

 さすがにその至近距離では意識するなと云うほうが無理。
 バリバリ意識しまくって打ち間違えまくる夏目。かと云って、映されているその内容が、デリートキー連打とかだとかなりダサい。そして、画面を見ている顔よりも、横に立っている文章の印刷された紙を見ている顔を撮りたいらしく(顔の向きが丁度いんだろう)、最早、画面を見ることさえ許されない状況に…ッ。

 テストの真っ最中なんッスけどもー。

 さすがに苦笑いしちまったい。
 ええいくそ、打ち間違えてキーボード見ずにデリート押して。
 ぎゃー勘弁してー。今何押したんだろう、明らかにKとか押したよなーとか思っても、画面を見てチェックできない。そこまでカメラマンに気を使う必要があるのかと問われれば、今思えばなかったのかも知れないけれど、なんとなくそのときは悪いような気がしちゃったんだよう。
 使い慣れないキーボードな上に、変換方法が違うマックを使用していたため、かなりうろ覚えでキー操作をしていました。こう云うとき、ブラインドできるとちょっと役に立つネ。並びの違うエンドキーとか、バックキーとか、デリートキーとか、あと、変換キーもないし、大きなローマ字の場合はF9を使わなきゃいけないしで、かなり四苦八苦しながらキー操作しましたよ。見ずに! ちょっとここは褒めてもらいたい! 見ずにやったんですよ! 見ずにィィ!!(涙
 そこで、カメラマンが飽きるまで付き合った夏目はかなり誤字変換脱字、誤入力を繰り返しておりまして、予想外のタイムラグ。
 
 ヤタレタ…。

 と思いながらも、それから全力で何とか一巡させて、漸くひとつ目の文章に戻り、一行目を打ち込んでいる最中に、アラームが十分を告げる。

 …マジで…?

 かなりショックでした…ああ、目標が…。
 しかし、計算した結果、目標文字数には及ばなかったものの、新記録を生み出した。

 十分間947文字。

 まァあとちょっとってとこですか。
 しかしアレですねェ、多分、最後の夏目の気迫は凄まじかったと思いますよ。カメラマンに邪魔されたあの恨みが、一気に指に力を込めたんですねェ。
 二度とできないんじゃァなかろうか。
 しかし、今度こそ950文字を…ッ!!

 ってか夏目、タイピングとかやってる場合じゃないんですよね。
 受けられるかわからないんだけれど、プロ検を受けたいなァと思っているので、その練習をしなきゃいけなかったりとかするんですが…担当の先生が、どうにも忙しいので中々会えないんです。あう。
 頑張れ俺。
 未来はあっちだ!!(ドコ

 
 三者面談がありまして。
 なんつーか、親が来た意味がないほど、担任は夏目にばかり話しかける。
 曰く、

 「貴方は批判ガンがあるのよ」

 ガンの変換がわからんのだけれど、どうにも批判的な台詞が多いとのこと。
 つまり、

 マジ面倒
 有り得ない
 つまらん
 ヤダ
 無理だし
 最悪
 
 とか云う、否定的な言葉ですか。
 ンこと云われても、こんなん別に意識して喋っているわけではないのですから、直せと云われても無理ですな(すでに使ってる)。尚且つ、批判的な台詞が多いと云われるほど使っている自覚もなければ、云っていたところで投げ出しているわけでもないと思うのですが、担任はその辺りどう見ているんでしょうかね。
 まァ、夏目に限らずこの感受性豊な青年期の少年少女に、

 否定的な台詞を吐くな

 と強制しようにも、絶対に、それこそ無理だと思いますが。
 だって、できないことはできないし、面倒だと思うものは面倒だし、有り得ないと思えば有り得ないし、つまらないものはつまらないし、ヤダったらヤダし、無理なら無理だし、最悪なことは最悪なんですもの。
 そんな言葉を押し殺してまで何をしろと云うのか。
 夏目はそんなん息苦しくって嫌。
 だって、あろうことか担任ってば、批判的な台詞ではなく肯定的な台詞を吐けと云って来たんですよ。
 例えば、英語が最大の苦手科目の夏目に対して、

 「期末の英語は絶対に大丈夫よね?」

 とか云われたので、

 「無理」

 とか云ったら、駄目でしょとか云われちゃって。
 でも、最大の苦手科目に対して、

 「大丈夫です、やればできます。何とかします」

 とか云えるはずもないし。ッてか寧ろ、そんな台詞を吐いていた時代は終わったと云うべきか、ええと、とにかく、当初はそんなことを思っていたけれど努力して次第に現実が見えてきた夏目にとって、英語はどうやっても点数の上げられない教科になってしまったわけでして、そんな前向きな台詞を吐けるような清清しく初々しい時代はすでに通り過ぎ去ってしまっているのですよ。
 だから、

 「無理」

 そう云うしかないのです。
 例えば、日本にはじめてきて、はじめて日本の文化に触れた人に対して、

 「貴方今日から日本人として生活しなさい。生活習慣も文化も全て日本人として生きるのよ」

 とおっぽり出されたら、普通は、

 「え、無理」

 って云うでしょ!?

 「できないよ」

 とか、

 「はァ? 有り得ないし」
 
 とかさ、云うでしょ。
 だから、無理なものは無理だし、できないものはできないの。
 もしここで、この人が、

 「わかりました、でき得る限りの努力をして見ます」

 とか云うような人だったらさ、夏目、きっと一生この人とは相容れないと思うんだよね。なんたって、そんな台詞を思いつきもしないで即否定だから、夏目(それが駄目なの?
 まァ、そう云うわけで、いきなり肯定的な台詞ばかりを吐けと云われても、そんなん云ってる自分キモイし、周囲もウザったがると思うし、何より自分的にかなり嫌。そんな清清しく青春やって汚れも辛さも挫折も知らないような人間が口にする、偽善的な台詞を吐きまくるなんて冗談じゃない。
 夏目には絶対に無理です。
 
 意識して喋らないようにしろと云うなら、夏目は口を開かないです。


 「下妻物語―ロリータちゃんとヤンキーちゃん―」って本を読みました。今、深田恭子が主演で映画化されているあれです。
 CM見て、ロリータとヤンキーのラブストーリーなのかと思ったら、どっちも女の子だったのね。
 ってか、原作者の野ばらちゃん(男)ってばすんごいテンポよく一人称でぶっ飛ばしてブチかましてくれるもんだから、思わず笑う。高尚な文学とか、洗礼された日本語とは程遠いんだけれど、取り敢えず、テンポよくて読みやすいギャグ。
 ロココ調に生きる主人公の桃子と、昔風な硬派一派のヤンキーのイチゴの、友情なんだか生き様なんだかよくわからない、現実離れした現実のお話。
 否、面白いですよ、お勧めですよ。
 ってか、桃子がロリータのBABY買うために、父親に嘘をついて金をもらうわけですが、その理由が有り得ない…ってか信じる親父が阿呆だ。詳しくは本編をお読み下さいませな(笑
 中々面白い。
 ってか、いちいち専門的な用語が多すぎてわからんところも無きにしも非ずですが…夏目が理解できなかったのは、刺繍の縫い方と糸とかその辺の用語。ロリータ衣装に関する用語は理解できるし、ヤンキー装束に関する用語も理解できるけど、刺繍とか乙女路線に入られちゃうと(ロリータは?)、さっぱりポン。
 でも面白かったー。
 借り物なので、今日一日で読まなきゃいけなかったんですけど、内容的には面白いし頁的には全然薄くてすぐに読めますよー。文書の小気味よさも抜群だから、読み出すと止まらないかも。たまにウフンとか笑っちゃって危ないときがあるから、電車の中とかバスの中とかで読むときは表情が絶対人に見られないようにご注意下さいませv
 面白い…ちょっと自分でも買っちゃおうかなとか思いつつ、今、ほしいBL小説の文庫が三冊ほどあるから我慢…それさえ買えないのに。
 取り敢えず面白いので、是非是非お読み下さいませv
 映画も見たいなァ…でも、ホーンテッドも結局見てないし、ハリポも見たいし、あー金ないしー。
 

 
 ではでは。
 本日はコレにて失礼。



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