冷たい季節 冷たいカラダ 冷たい海 冷たい私 - 2002年11月05日(火) 海の底に沈んだ私は冷たい海中でゆらゆらと、 海水と一緒に揺れていました。 手を離したのは私で、浮かんで行ってしまった のは彼でした。 このまま、海の藻屑となってしまって消えてし まおうと思いながら、ずっと目を瞑っていました。 ゆらゆら揺れながら、どうして手を離してしまった のだろうと、その事しか考えられなくなっていました。 ある日、誰かが私の手を握ります。 思い瞼を開くと、彼が私の手を握っていました。 そしてその手に導かれるように、私は海中から浮上しました。 久しぶりに海面にあがり、太陽が気持ちが良いのだと言う事 を知りました。そして私達は貪るように求め合いました。 今までの空白を埋めるかの様に・・・。 刺す様な日射しは、いつかからか私の心まで刺し込み、風が冷 たくなる頃は、海水に濡れた私の肌から体温までも奪っていく 様になりました。 私の身体はいつからか冷えきり、また、彼の身体も冷え切り、 私達はお互いの体温だけではもう、温もりすら感じなくなって しまいました。 私は、刺すような太陽の日射しがとても欲しくて仕方が、ありま せんでした。 冷たい身体を押しつけ合っても、どんどん冷えて行く事が、苦痛で しかなく、私は唇を紫色にしたまま、太陽の事だけを考えていました。 ある日、彼の温もりを全く感じられなくなってしまいました。 抱きしめている彼は、私を冷やしていく。 もう、私には彼を温めてあげられる体温も残っていない。 あんなに、求めあっていた気がしていただけで、私達は温もりだけが 欲しかったのです。 偽りの温もりは、必ずいつか取り返しがつかない位に、冷たくなって しまう。 私の腕は寒さで痺れ、彼を抱きしめている力を抜きました。 彼は、いつかそうなるだろうと解っていたから。 そう言って、冷たい海の底に消えていきました。 私は沈んでゆく彼を見ないように、最期の力を振り絞って陸に上がり ました。 よろよろと歩き、冷たく突き刺さる様に吹きつける風に向かって 私は歩きました。 突き刺す様な太陽を求めて・・・。 振り返った海原は、何も無かったかの様に、灰色でした。 7月の11日と29日の日記と繋がっているかもデス。 三部作になってしまった。 興味があったら、「熱帯魚」「海月」の順番で読んで みてください。 -
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