熱帯魚 - 2002年07月11日(木) 私達は手を繋いで立っていました。 この手をもう離さないそう誓い合って飛び込みました。 白い泡が水面に浮かんでいきます。 私は彼と手を繋ぎながら、今までの事を色々思い出していました。 後悔する事は何もなくて、これで良かったんだ。と思い幸福感に 浸りながら静かに目を瞑りました。 どれくらいまで沈んで行ったのでしょう。 彼の手が私の手を握っていない事に気づいて動揺しました。 彼は一緒につけていた、大きなおもりを私の右足に器用にからみつけて いました。 私はされるがままどうすることも、出来ませんでした。 彼は水泳が得意だった。 私は全く泳げない。 そんな事だけがアタマの中をまわりました。 両手を万歳するように彼にむかって突き出してみました。 ほんの一瞬だけ私の両手を握って微笑みながら彼は手を離しました。 私はそのまま水底に沈みながら、キラキラ光る水面に向かって ゆらゆら動く 彼の大きな足の裏だけを、見つめていました。 手を伸ばしても、誰も助けてなんかくれないんだと 初めから結末なんて知っていたんだと、 理解した私は、冷たくなっていく両手を自分の胸に押しあてながら そのまま沈んで行きました。 彼の足の裏が熱帯魚みたいに綺麗だったから 見えなくなるまで、見つめていました。 水の中だと涙も出ないんだな。 と感じながら暗い水底へと沈んで行きました。 どこまでも沈んで行きました。 -
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