川崎連絡会議日報

2008年12月27日(土) 2009年を前にして

2008年も残り少なくなりました。
『日本における多文化共生とは何か-在日の経験から-』(新曜社)の出版記念会(7月21日110名参加)は、今年の最大イベントでした。
「戦後の根本課題」と題し、講演いただいた作家・高史明氏は、当時40代であった1974年、東京・丸の内にあった日立本社糾弾闘争に李恢成氏と共に参加されました。
また高氏は、日立闘争から生まれた地域活動の基盤となった在日大韓基督教川崎教会で、生き方を求めた20代の青年たちと交流し、青年たちの悩みを受け止めてくれました。
その後、お会いする機会もなく30年以上経ち、出版記念をきかっけに再会できました。

「戦後の根本課題」は、言うまでもなく日本の戦争責任だと思います。
戦争責任を明確にしなかったために、65年経過しても強者(組織の権力者)が弱者である個の声を無視し人間を潰しています。

『日本における多文化共生とは何か』を出版して半年になります。企業社会の「共生」批判に対して多くの意見・批判を期待しているのですが、企業(日立製作所)、日立労組をはじめ(連合)組合、運動体からの反応はないようです。

日立闘争を経験した私は正規社員として働いていますが、生産・景気調整のバッファ装置として悪用されている非正規・派遣労働者は、差別的労働条件の下で働いています。
一方的な契約解消・解雇という、倫理・理性・人権・社会貢献を謳う経団連経営者の横暴ばかりが目立っています。衣食住を失い、明日の飯が食えるのか、路頭に迷う多くの労働者が緊急事態に直面しています。
非正規・派遣という不安定・不利な立場に置かれながら、経営者の横暴な解雇に怒り、決断して声を発し、立ち上がった当事者もいます。私の職場では話題にならず、「いつ自分に降りかかってくるか」という不安を感じつつ(?)労働者は黙って働いています。
企業社会は、正規労働者でさえ、ものが言えない(言わせない)のです。企業内組合(幹部)は、正規組合員から「強制」徴収した莫大な組合費を(勝手に)使っていますが、「同じ職場で働く非正規・派遣労働者を支援しよう!」という声は、聞こえてきません。沈黙しています。

連合高木剛会長は、朝日記者の質問に以下のように応えています。
「非正規労働者はどう身を守ればいいのでしょうか?」
「非正規の人に対しても、経営者が解雇回避の努力を尽くしたかどうかなど、正社員と同様な整理解雇の原則が適用されるべきだ。ただ、非正規の人たちに自分でそれを交渉せよというのは酷だ。企業の労働組合がそれは言っていかねばならない。自分たちが切られる立場になった時にも同じ武器で闘うのだから。」(12/11)
会長は、連合および傘下の企業内組合(幹部)が、同じ職場で働く非正規・派遣労働者を何故支援しないのか?どう守ればいいのか?具体的な救済策を出していません。

新自由主義(ネオ・リベ)の下で競争・選別・効率を最優先する経団連。人権・理性・社会貢献を謳う一方で、生産調整と利潤追求のために合理化を強行するのが、企業経営者の常套手段であり、本音です。経営者の勝手な都合で青年たちの就職内定も取り消され、就職はさらに厳しくなっています。

今年4月10日、加藤千香子横浜国立大学教授に招かれ、300名以上の学生に15分程講義しました。学生たちは、私が日立製作所を訴えた年頃です。
日立から就職差別されたときの心境、企業社会・「労働者の権利を擁護する」企業内組合、組織が個を潰している実態を話しました。
学生たちは、「将来、自分が直面する就職(差別)、職場(企業・行政)で体験する」ことを念頭に置き、真剣な眼差しで聞いてくれました。これも私にとって貴重な体験でした。

経団連は、「社会の信頼と共感を得るために」 「企業行動憲章序文」で以下のように宣言しています。
「企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)」への取り組みに注目する人々が増えている。また、グローバル化の進展に伴い、児童労働・強制労働を含む人権問題や貧困問題などに対して世界的に関心が高まっており、企業に対しても一層の取り組みが期待されている。」
「従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。」
「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。」

「人口減少に対応した経済社会のあり方」 について
「すでに就労している外国人材や、今後、受け入れていく外国人材の定着を図っていくという観点からは、外国人と日本人がともに、双方の文化・生活習慣の違いを理解しつつ、同じ地域社会の中で支障なく生活をしていくことが可能となるような環境づくりを進めていく必要がある。一方で、外国人は日本語能力が十分でないこと等から生じる地域社会との間の軋轢や摩擦、また、義務教育年限の外国人の子供の不就学、不安定な雇用等の問題も顕在化しつつある。2008年10月14日 (社)日本経済団体連合会」

金融破綻、グローバル経済の停滞、落ち込みで、経営者責任は明確にされず、「企業行動憲章」と裏腹に、企業の外国人労働者の「受け入れ」と同時に弱い(非正規・派遣)労働者への排除・解雇・差別が横行しています。
「労働者の街」であった川崎市はじめ各地域の実態を見るまでもなく、行政・経団連の(弱者との)「共生・協創」理論・スローガンは、矛盾と問題点ばかりが浮き彫りになり、上から強制される「共生」も破綻しています。

私は、住民・市民が人間らしく生きる、開かれた(地域)共生社会を求め、心を新たに2009年を迎えたいと思います。

「外国人へに差別を許すな・川崎連絡会議」事務局長
朴鐘碩(パク・チョンソク)


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