Spilt Pieces
2003年04月30日(水)  土
昨夜は、柄にもなく寝付けなかった。
風が強くて、その音が気になってしまった。
我ながらそんな繊細だったろうかと疑問を感じながら。
ともあれ、風の音を聞きながら布団をかぶっていた。


ふと、昼間の出来事を思い出した。
母が野菜の種を蒔くのだと言って、嬉しそうだった。
そういえば結局蒔いたのだろうか。
風が吹いたら飛んでいってしまうのではないかと思った。
土の中にあるとしたならば、種は今どのような状態になのだろう。
想像が膨らんでいった。


地表近くに薄く土をかけられただけでは、きっと風と共にどこか遠くへ行ってしまう。
地面の奥深くであれば、土の重みで息苦しくなってしまう。
ならばやはりほどよいくらいの土の中、風が通り過ぎるのを待っているのだろうか。
土は、暖かいのだろうか。
布団をかぶって揺れぬ家にいる自分より、地面で程よい重みに耐えながらその恵みに与っている方が、心地よいような気がした。
眠れない春の夜の戯言。




大学からの帰宅途中、空を見上げた。
今日は朝から天気が悪い。
昨夜の風と、今朝の雨。
それは土の中でひっそりと暮らす種たちにとってどんなものだったのだろう。


休み半ばの図書館。
閑散とし、並ぶはずの印刷機を1人で使う。
ヘッドホンをしている私。


なんだ、結局はいつもと変わらない。


すいているはずのレンタルショップ。
半額デーと称して人を飲み込む。
一緒に、飲まれてみる。


なんだ、いつもと同じこと。


夜、空は曇天。
段々畑のような雲が、空の端を占める。
パチンコ屋のサーチライトは、今宵誰を呼んでいるのだろう。
鉄の少し大きめなゴーカートに、私は小さな命を乗せてアクセルを踏む。
投げ出されぬよう、吸い込まれぬように、空を睨む。
空を睨む。
空を睨む。


…駄目だ、結局私は空が好きらしい。




足元にある大地。
今私がここで消えても、空から見たら何がどう違うのか、きっと何年かかっても間違い探しの答えなど見つかりやしない。
大地に根っこを生やして、笑う。
それが仮に限界だとしても、できる範囲で幸せになれればいい。


空は、今日も遠くて。
雲の浮かぶ夜は、普段より闇が深い。
臆病者な私は、今日も土の替わりに布団をかぶって眠るだろう。
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