| Spilt Pieces |
| 2002年11月17日(日) 花輪 |
| 私が毎日必ず通る道に、葬祭式場がある。 そこの信号は長いので、大抵そこでしばらく待っていることになる。 いつも、意識せずともふと目をやってしまう。 大きなモノトーンの花輪が、たくさん立っている。 時折、花輪が立っていない日がある。 それは、葬式があるときとないときと両方だ。 看板があるのに花輪がないとき、私はいつの間にかぼーっと考え事をしてしまう。 この人は、どういう人生を歩んできたのか、ないことはそれは本望だったのか。 花輪は、中にたくさんあるのか、ではいつも表に出ている人は多すぎるだけなのか。 看板も花輪もないときが、たまにある。 そんなとき、私は不思議な気分になる。 誰も泣いている人がいないことを喜ぶ。 そう、同じ一つの街に、これだけ絶え間なく別れがあるという事実に私は耐えられそうもなくなる。 現実がどうのこうのじゃなくて、ただ感覚的な話だけれど、毎日別れがあるだなんて、考えたくもないから。 看板も花輪もない日は、心を安定させてくれる。 毎日通る道で、毎日誰かが泣いているのはもう見たくない。 今日、大きな花輪がたくさん出ていた。 誰かが一人、消えたみたいだった。 そして私は、それが誰であるかを知らない。 私は、それを知らなくてもこれからの生活何も変わらない。 こういうことが、時折ひどく虚しくなる。 どうすることもできないけれど。 |
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