2006年01月09日(月)  道玄坂グルーヴィー。
 
「この前貸してくれたアルバムの6曲目、すごいいい曲だね」
「えー、どんな曲だっけ」
「ほら、ちょっと静かで幻想的な」
「歌ってみて」
「サァ〜ァ、フフフ〜ン、目を閉じて〜、チャララララ、し〜てく〜フフフ〜ン、思い出す〜」
「……」
 
渋谷の道玄坂。彼女はしばらく首を傾げた後、しばらく僕の前を歩き、立ち止まり振り返り、眉間に皺を寄せ、「あなたはあれだけカラオケ上手く歌えるのに、鼻唄になるといつもさっぱりわからないわ」と言った。
 
今回も、彼女が貸してくれたアルバムの素晴らしさもとい、僕はちゃんと君が貸してくれたアルバムを傾聴し何かしらの感動を抱き君の音楽的価値観と共通、共感するものを発見し、その感想を述べようと思った素晴らしい人間であるということを伝えるために、アルバムの6曲目、シングルで出してるようなメジャーな曲ではなく、あえて6曲目という地味な位置付けの曲をチョイスしたというのに、彼女は眉をひそめて異星人を見るような目で僕を見ている。
 
憐れな僕はうつむいて小声で同じフレーズを鼻唄で奏でてみて、なるほどこれでは伝わらない。僕自身、今何の曲の鼻唄を奏でたかさっぱりわからない。これはきっと女性の歌手の曲だからいけないんだ。あの曲のトーンで歌っているからいけない。そうだよそうだよリズムだよグルーヴだよ、ちょ、ちょっともう一回聞いて。
 
「サァ〜ァ、フフフ〜ン(手拍子)、目を閉じて〜、チャララララ(リズム)、し〜てく〜フフフ〜ン、思い出す〜(グルーヴ)」
 
そして僕は渋谷のど真ん中で迷子になった。
 

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