2005年08月14日(日)  危機目前にして。
 
電話するたびに彼女は「水がない。水がないの」と、泣きべそをかいているのは、彼女は四国は香川高松の出身であり、日照り続きのせいでダムが渇水。生活飲水は勿論、糞すら流せない状況になることを杞憂しているのであって、可哀想なことは可哀想なのだけれど、見かけだけの優しさでボルヴィックを10本送ったとしても、何の解決にもならず、「大変だねぇ」としか言えない自分自身に自己嫌悪しながら電話を切ったらシャワーを浴びようと平気で考えている。
 
しかし水がなくなるということはどういうことなのだろう。僕たちは日頃、電気はついて当たり前。水は流れて当たり前。空は青くて雲は白くて足は臭くて当たり前と考えているが、その当たり前が突然崩壊したらどうなるのだろう。電気が消えて水が止まって、空が赤く雲は黒く、足からミントの香りが漂ってきたらどうするだろう。なんらかの対策は考えると思うが、それを真から受け容れることができるのだろうか。
 
人はいつか死ぬ。でも今生きている人は死んだことが一度もないから、死んでも魂が残るとか、化けて出てくるとか、生まれ変わって鳥になるとか、死ぬという事実に対して、何かと抵抗を試みる。しかしそれが何になるのだ。魂が残って、オバケになって、鳥となって羽を広げて、ボルヴィックを10本送っていったい何になるのだ。
 
彼女は、彼女を含む香川の人間は、今、目前に迫っている渇水の危機に何を思っているのか。彼女は、何を、思っているのか。
 
「えっとねー、今日お兄ちゃんとユニクロに行ったの」
 
何を思っているのか。
 

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