2004年11月26日(金)  フィールドの問題。
 
僕は自炊をしない、というかできない生活を送っているので、食事はもっぱら牛丼屋、ラーメン屋、喫茶店、ファミリーレストラン、ファーストフード店などの外食産業に頼らなければならず、腹が減るたびに、あぁ今日はどこに行こう。面倒臭いなぁ。腹なんて、減らなければいいのに。胃に鉄アレイでも入れてたら始終満腹なのかしら。
 
と、馬鹿みたいなことを考えながらジーパンを履いてジャンバーを羽織り、マンションを出るのだけど、うちのマンションから一番近いラーメン屋、ここは朝から晩まで行列ができていて入る気にならない。一度行列ができるほど美味いのだろうかと訝って行列に耐えて入ったことがあるけど行列ができるほど美味かった。
 
しかし僕はただ、腹がなんとなく満たされればいいのであって、行列の横を通り過ぎながらバーカ、バーカラーメン如きで並びやがって。カップルで。食欲丸出しじゃないか見苦しい。俺はもっと合理的に飯を食うぞ。お前らと住んでいるフィールドが違う。と、思いながら無精ヒゲで一人寂しく行列を通り過ぎる僕は明らかに行列に並んでいるグルメな都会人より低いフィールドに立っているのであり、そんな低いフィールドから這い上がれない僕は身分相応の店に入ろうと、前々から気になっていたある中華料理店に入った。
 
この中華料理店、看板はあるのだがどこから入っていいのかわからず、何処だろう何処だろうと思いながら先日その中華料理店の前で煙草を買っていたら、偶然に入口を発見したのであり、偶然によってでしか見つけられない入口は見事に自動販売機の裏に位置していたのであり、これじゃあ客は入らんよ。僕は偶然で見つけたからいいものの、他の人たちはそういう偶然を仕事とか恋愛とか人間関係などに有意義に使っているのであって、僕は低いフィールドに住んでるから自販機の裏も覗いたけれど、これじゃぁダメだよ。と、煙草をポケットに入れて鼻をほじりながらマンションに帰った3日前。
 
そして再び入口に立っている3日後。小さなガラスの引き戸を開けて店内に入ると、一人の老人が新聞を読みながら煙草を吸いながらビールを飲みながら腹を掻きながら。と、実に器用な老人だなぁと思いながら、店主はどこだと辺りを見回すと、僕に気付いた老人が「いらっしゃい」と、わー、この人店主なんだー。なんて素敵な普段着なんだー。店主不在だから僕急遽頑張ってますみたいな格好じゃないかー。と、不信感を持ちながら中華そばを注文してポケットに入れてきた外食用の文庫本を開いて出来上がりを待った。
 
しかしホントにわかりづらい入口だなぁ。看板ちっさいし。と、老人を見ると、この店は看板も入口もちっせぇけど、あすこのラーメン屋のようにグルメぶった都会人が来るとこじゃねぇんだ。ここは味のわかる玄人しか来ねぇんだ。だから看板なんて必要ないし入口もちっさくても構わねぇんだ。わかる奴だけ入ればいいんだ。素人は、すっこんでな。と、その顔は語っており、ほぉ、そうなのかぁ。大人の隠れ家気分だなぁ。格好いいなぁ。と僕も関心する振りをしてみたけど、いつまで経っても僕以外の客は入ってこないので心細くなって音も立てずにソバをすすったとても低いフィールドで。
 

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