2004年06月21日(月)  卒倒ヘクトパスカル。
 
今回の旅行で何に一番目を通したかというと、観光地案内でもグルメ案内でもなく台風情報であって、午前8時。ビジネスホテルの小さな窓を開けて卒倒。なんだこら。何この暴風雨。人っこ一人歩いていない朝の観光地。電池が切れる前なのか、全力で、ボタンが潰れんばかりの力を込めてリモコンのボタンを押し、テレビの電源を入れる。
 
「お、お、おおが、大型で……ひ、非常に、あっ、せいり、生理、せいり、勢力の強い、台風6号は……」
 
馬鹿だなぁ。勢力が強いってことはわかってるんだから屋内でレポートすればいいのに、わざわざ高松駅近くの海に面した堤防で危険にさらされながらメガネをずらしながら顔を歪ませながら。
 
シャワーを浴びて、髭を剃って、お洒落して荷物をまとめて狭いビジネスホテルの一室で観光モードに入った僕はチェックアウトするためにフロントに降りる。
 
「お客さんこれからどこ行くの?」
「いや、今日帰るんですけど、とりあえず駅に」
「この雨と風では外には出れんよ」
「それじゃあお昼くらいまで部屋にいていいですか」
「いや、それはできんけど」
 
できんのかい。とフロントのおばはんを呪いながらチェックアウトを済ませ、思春期のような反発心を抱き、勢いよく外へ出た瞬間ビニール傘粉砕。親の制止を振り切って田舎から東京に出てきた青年の心境のように、今更戻るわけにもいかず、とりあえず駅へ向かう。
 
高松駅には徒歩で5分もかからない距離なんだけど、この風と雨でまったく前に進めない。前が見えない。明日が見えない。今日は帰れないかもしれない。飛行機飛ばないかもしれない。前に進んでるのに斜めにしか進めない。駅が遠くなっていく。
 
「大型で非常に勢力の強い台風6号は……」
 
びしょ濡れになり、駅に到着し、暴風のため駅の扉が開かず、駅員2名に手伝ってもらい、ようやく駅構内に入るや否や、足止めを食らっている観光客が一気にびしょ濡れの僕を見て「こいつアホや」という意味を込めた冷たい視線を投げ掛ける。お前らもアホやんけ。
 
駅の大型モニターにはNHKの台風情報が絶えず流れている。もう今日は絶対に帰れない。このまま彼女にも会えない。朝、堤防でレポートをしていたアナウンサーには会った。暴風雨にさらされなくてもメガネがずれていた。
 
とりあえず今回の旅の目的を達成させるため、駅の構内でうどんを食べた。食べてるのはびしょ濡れの僕一人だった。店員が「こいつアホや」という意味を込めた冷たい視線を投げ掛けていた。月見うどんに涙が一粒こぼれ落ちた。
 

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