2004年04月11日(日)  春の完成。
 
来週、鹿児島に帰郷するにあたり、土産の一つでも持っていかなければ、都会で好き勝手やってる長男への家族の批判は免れぬのであって、こうやって婦人服専門のブティックに小一時間居座っている。男一人でこのような店に入っていること事態、恥ずかしいことであるのに、生来の優柔不断な性格に依り、母親への贈り物ひとつにも阿呆のような時間をかけてしまう。
 
たまにはワンピースなんていいんじゃない。五十過ぎてるんだけどさ、これなんていいんじゃない。どうですか店員さん。厚化粧で今から参観日にでも行くような格好の店員も母親と同じくらいの年齢が、年相応の春色のワンピースを羽織っており、これいいじゃないと思って、時間をかけて選別したワンピースを広げてみたが、広げてみただけではイマイチよくわからない。しかし僕はこの香水臭いブティックに小一時間居座っているのであって、母と同年齢のような店員との関係もある程度打ち解けている。これ試着したいんですけど。「えっ、どなたが?」あの、貴女が。
 
店員の母。少しは嫌がるかと思われたが、逆に嬉しそうに、私でいいの。私でいいのかしら。なんて言いながら後半、僕の話はまったく耳に入らず、飛ぶように試着室に入り、どう? どうですか? 十歳くらい若返った気分です。なんて終始笑顔。僕がこの店員に買ってあげる服を選んでるようで。あ、まわらなくていいです。そんな気は利かせなくていいです。
 
私もこれ買おうかしら。と、店員、試着室の鏡を見ながらなかなか服を脱ごうとしない。困った僕は似合いますね。とても似合いますね。春ですね。十歳くらい若く見えます。だから20歳くらいに見えます。なんてヤケクソのお世辞を述べながら、早く脱いでくれないかなぁと足をもじもじさせながら中年女性の後ろ姿を眺めていたら、再び試着室から飛びだして、花柄模様のスカーフを首に巻き始めて、これで今年の春は完成です。なんてよく意味わからないことを言い、ようやく試着室のカーテンを締めて、じゃあそれ下さいっつって、これまた恥ずかしいラッピングまでしてもらって、
 
ちょっとデートしてるみたいでしたね。なんて何十歳も年上の女性に言われて、頬を少し赤くしたら「お母さん、いつまでも大事にして下さいね」と、あの花柄のスカーフをプレゼントしてくれた。
 

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