2004年04月03日(土)  吊り革七人人生模様。(後編)
 
それではおさらいしてみましょう。

座席 ● ● ● 地 女 平 ●
 
吊革 ● ● ● オ 僕 ● ●

 
地:地井武男(熟睡) 女:女子十二楽坊 平:平野レミ オ:オバサン 僕:ヨシミ ●:他人
 
座席の配列はこのようになっていた。僕が座席に座る為には目の前の女子十二楽坊が然るべき駅で降りて座席を空けなければいけない。前の座席が空いたらその前に立っていた人物が座る権利を獲得できるというのは、電車内の暗黙のルールのようなもので、例えば僕の左隣に立っているオバサンは、オバサンの目の前に座っている地井武男が熟睡している為、座席に座ることが絶望的だということになる。
 
そして女子十二楽坊が動いた。よし。座れる。早く立って。早く立ってどっか行って。と、この座席を立つタイミング。これには二種類あって、駅に着く少し前から座席を立ち、電車の扉が開くと同時に移動を速やかに開始できるタイプと、電車が駅に到着するギリギリまで座席に座り続けるタイプ。女子十二楽坊は前者であった。速やかに立ち上がり、扉の方へ向かっていく。そして座席は以下の状態になった。
 
座席 ● ● ● 地 ○ 平 ●
 
吊革 ● ● ● オ 僕 ● ●

 
必然的に僕は○の場所に座れることになる。だって車内の暗黙のルールだからね。東京の人間は冷たいなりにその辺のルールを熟知してるからね。平日午後6時の電車は皆仕事帰りで疲れていて、誰だって座りたい気持ちでいっぱいだもんね。
 
と、平野レミ。隣の座席が空くや否や(as soon as)目をカッと開き、僕の左に立っていたオバサンの手を引くではないか! 「ここ、空いたよ」と、そして僕の左隣のオバサン、平野レミとは面識がないはずなのに、中年女性の妙な結束感というものが瞬時にして発生し、「あらありがとう」なんてのうのうと僕が座るべき座席に腰を降ろすではないか。驚愕。愕然。
 
だいたい電車に乗った時というのは、座席が確保されなかった場合、それぞれが勘と想像を働かせ、早目に降りそうな乗客の目の前の吊り革を持つのであって、僕の場合、その勘が当たったのであり、いわばラッキーな状況になったのだが、なぜこのような不条理な状況になったのか考察してみたところ、
 
平日午後6時の電車はスーツ姿の疲れたサラリーマンや仕事帰りのオバハンでごった返す中、僕は私服でさっきまで遊んでました。皆が働いてたときにデートとかしてました。みたいな格好であり、私たちは皆疲れてんのよ。フリーター風情が。年金払えよ。と周囲に思われるのは当然であるが、僕はこうやって私服だけど、職場で白衣を着るので出勤にスーツを必要としない。しないが故に私服であり、チャラチャラした格好であり、指輪も3つくらいつけて、ジャケットはほんのり香水の匂いがする。
 
しかしその第一印象だけで人間を判断するのは大きな間違いで、今日だって僕は自分の仕事の合間を縫って患者さんの歩行訓練や関節可動域訓練などを行い、昼休みも早々に切り上げ、病室に赴きコミュニケーションを計るなど熱心に仕事を行っていたにも関わらず、職場を一歩出ると、チャラチャラした若者に成り下がり、こうやって不条理な状況に置かれているので人間が腐っていく。
 

-->
翌日 / 目次 / 先日