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| 2004年01月14日(水) 彼女の変化球。 |
| 恋愛には駆け引きというものが存在して、押しては引いて時に流して流されて。直球を投げると受け止めきれないし、変化球を投げると球の動きが目で追えなくなる。松坂大輔のような150キロ級のストレートや、野茂英雄のバッターの手前で落ちる変化球など、こと恋愛に関しては必要ない。誰でもキャッチできる緩やかな球を投げなくてはいけない。恋愛とは言葉のキャッチボールで成り立つのだから。ぶつけたりしてはいけない。 しかしそのキャッチボールの中で、駆け引きが存在する。投げると見せかけて投げない。取ると見せかけて取らない。全然別の場所にボールを放り投げる。 さて、彼女の場合はどうだろう。ここ数日毎日続いている言葉のキャッチボールの行く末は。恋愛のようで恋愛ではない。彼女は僕の顔を見て、僕は彼女の顔を見る。お互いの視線の先に何があるのだろう。 仮に。仮に彼女がこのキャッチボールの過程で、駆け引きを仕掛けているとしたら、実に巧妙な駆け引きを駆使していると思う。もしかしたら彼女は先天的にそういうことに長けているのかもしれない。その行為は彼女の無意識下で行われているように感じるが、もし、それを意識的に行っているとしたら僕は諸手を上げて降参するしかない。僕が勝てる相手ではない。 僕は確実にこの状況を楽しんでいる。彼女の口元だけを動かす笑みも、その状況を楽しんでいるようで。僕が投げてもボールはしばらく帰ってこない。忘れた頃に僕の頭にポカンと当たる。そんな僕を見て彼女はクスクス笑っている。投げ返そうか躊躇していると、彼女は「早く投げてよ」と催促する。彼女がそう言っているので投げてみる。彼女はボールを追うこともなく知らんぷり。もういいよと匙を投げかけると、 「パスタが大好きなの」 と意味のわからない言葉を僕に投げかける。僕は首を傾げる。僕は腕組みをして興味のない振りをする。彼女はクスクス笑っている。 「私の中でパスタがどのくらいの場所に位置するかわからないけど、パスタよりあなたの方が好きです」 彼女はそう言ってとっておきのボールを僕に投げ返す。取らないと怒られそうだから、頬を赤めてキャッチしてみる。やはり彼女はクスクス笑っている。 |
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