2003年11月21日(金)  夜勤。深夜3時。
 
夜勤。深夜3時。ナースステーションから何をするでもなく、ぼんやりと病棟の廊下を眺めている。
 
廊下には徘徊する老人が2・3人。皆昼間は眠っていて夜に精神活動が活発になる人たち。眠剤で眠らせるには遅すぎる時間。部屋へ誘導してベッドに戻すことも無意味。だから僕はぼんやりと彼等を眺めている。
 
時々ナースステーションに入ってくる。僕を見るなり「皇居の方角はどっちかね?」「えっと、あっちかなぁ。いや、こっちだと思いますよ」患者さんは僕が指した方向へ振り向き「日本列島万歳!!」日本列島?
 
「飯はまだかね?」
「9時間前に食べたばっかりじゃないですか。あ、だけどいいこと教えてあげます。あと5時間でご飯がくるんですよ。あと5時間待つだけで今日は、えっと、ちょっと待って下さいね。あと5時間待つだけで、今日は・・・・・・朝から秋刀魚の塩焼きが食べれるんですよ」
「そうかね。今日は秋刀魚かね」
「そうです。秋刀魚です。あと5時間で」
 
そして患者さんは何事もなかったように徘徊の続きを始める。
 
僕はいつまでも小さな誘導灯しか灯っていない深夜3時の暗い廊下を眺めている。老人達は失ったものを探すようにいつまでも下を向きながら歩きつづけている。
 

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