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| 2003年09月04日(木) 幸せの象徴。 |
| 「今夜何食べたい?」 彼女からの電話。付き合う前は「私料理なんてできないわよ」と意味もなく胸を張って言ってたくせに実は結構上手かったりして美味かったりして電車の中で空腹の腹を押さえて貧乏揺すりしながら彼女のマンションへ向かう。 「何食べたい?」 「うーん」 「それじゃあ麻婆茄子にしましょう」 彼女は今日の朝からそれを作ることを決めていたように用意周到な口調で話す。彼女のマンションまで約1時間。電車の中で僕の前に座っているカップルを見ながら 「お前の彼女は大きな買い物袋をぶら提げて実に幸せそうな顔をしているが料理なんてしないだろう。その爪で、何が作れるものか。その分僕の彼女ときたら今日メールで『いっぱいお買い物した!』って言ってたが、その後料理を作っている。幸せのバロメーターは料理ができるかできないか。作ってくれるか作ってくれないか。現に僕は今こうやってすさまじい空腹に耐えているが、あと30分もしたらビールを飲みながらテーブルをはさんで麻婆茄子を食べる。キミ達は『今日何食べるー?』『いっぱい買い物しちゃったから疲れちゃったー』『それじゃあコンビニでお弁当買って帰るか』『わー! ヤッター! コンビニのお弁当大好きー!』なんて会話をするのだろう。そしてキミ達がコンビニで弁当を温めている間、僕は親密な愛の空気を温めるんだ」 と、駅を降りて彼女のマンションへ向かう。オートロック式のマンション。彼女のマンションに比べて僕のマンションときたらマニュアルロック。自分の身は自分で守らなければならない。1階の正面玄関出入口で部屋番号を押してインターホンを押す。 「はーい」 「ただいまー」 まるで「ただいま」という言葉が合言葉であるかのように自動ドアのロックが解除される。エレベーターに乗って洋服と髪の毛を整えながら彼女のドアの前に立つ。 「ただいま」 「おかえり」 抱きついてくる彼女の向こう側に、皿の上で湯気を立てた幸せの象徴が見えた。 |
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