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| 2003年08月03日(日) ワンランク上の男。降りるべき駅は遥か彼方。 |
| 午後9時くらいの電車に乗ると、一日の激務に疲れ果てた人達が全身に疲労感をみなぎらせてだらしなく座席に座っている。しばらくして眠くなる。だらしなく座ったままだらしなく眠る。だらしなく起きてだらしなく歩いて家に帰る。だけどだらしなく眠ってそのまま目覚めない人が時々いる。いや、目覚めることは目覚めるのだけど、ハッと我に返った時、降りるべき駅はとうに過ぎていて最寄駅より数駅先のわけのわからない駅で降りなければならない羽目になる。 僕の横に座っているサラリーマン。やはり眠っていて、降りるべき駅に到着し、ドアが開き、ドアが閉まろうとする瞬間に突然目覚め、ドアのもとへ掛け寄るも間に合わず、閉まったドアの先に見える見慣れた風景が流れていくのを悲しそうに眺めながら僕乗り過ごしてしまった馬鹿なサラリーマンですという風に肩を落としながら再び座席に戻ってきて次に停車した駅で降りた。 何が悲しいってこの自尊心のなさが悲しいです。疲労とか悲哀に自らの尊厳が敗れてしまっているのです。僕は乗り過ごしてしまっても、次の駅で降りるなんて馬鹿なことはしません。既に降りるべき駅のドアが閉まって降りそびれてしまったという事実を車内で座っていた数人が目撃しているのです。で、「あ、こいつぐうたら寝てやがるから降りそびれてやんの。馬鹿だね阿呆だねパパイヤマンゴだね」なんて思っているのです。ムムムー! 自分のプライドは自分で守ります。わんぱくでもいい、たくましく育ちます。 僕は乗り越してしまったからって次の駅で降りるなんて万人に理解しやすい行動なんて起こしません。断固として起こしません。次の駅で降りるだろうという万人の予想を覆してやります。次の駅で停車してもびくとも動きません。なんでもない態を装います。え? なんで? なんで僕がこの駅で降りる必要があるの? という顔をします。同じく次の駅に停車してもびくとも動きません。車内の大衆は動揺するでしょう。「なんだよこいつ。さっきの駅で降りるんじゃなかったのかよ。一体どこで降りるんだよ。さっきの慌てふためいた行動はなんだったんだよ」と思わせることができたら勝利。大衆のワンランク上に登ることができるのです。ワンランク上の男。降りるべき駅は遥か彼方。降りる駅が離れていくほど、その距離に比例して僕の自尊心は回復されるのです。 被害的な思考というものは、決して相手の目を気にしているのではなく、自分自身を守るために存在するのです。 |
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