2003年02月06日(木)  2月日和。
暖かいので海に行った。侮った。寒かった。春のような日差しに騙された。
テトラポットに座った瞬間「帰ろう」と言った。一緒に行った女性もすぐに同意した。
同意も何も彼女は車の中で待っていた。
 
――
 
「寒くないから海行こうよ」
「いやよ。だってまだ2月よ」
「2月の海に行ったことある?」
「ない。あなたは?」
「僕も、ない」
「じゃあよしましょう」
 
平日の午前10時。窓を開け、2人でベランダに足を投げ出して紅茶を飲んでいた。
日差しは柔らかく、優しく僕らを包んでいた。トイレに貼ってあるムーミンの2月のカレンダーに書いてあった通り、春はもう、そこまで来ているようだった。
 
「じゃあ一人で行ってくる」
「私は何すればいいのよ」
「シーツを洗って布団を干してくれないか」
「冗談じゃないわよ」
「じゃあカーペットを取り替えてほしい」
「帰る」
「送るよ」
 
そして彼女は僕の車に乗り、僕は海の方に向かって走り出した。彼女は窓を開け「キャー!拉致られるー!」と叫んでいた。彼女の長い髪が揺れた。彼女もなんだか楽しそうだった。
 
――
 
「ほら、私の言った通りでしょ」
暖房の効いた車の中で彼女は勝ち誇ったように言った。
「うん、来るんじゃなかった」
僕は車のドアをもう一度開け、靴に付いた砂をはらった。「帰ろう」
「ちょっと待って」
突然彼女はアクセルを踏もうとした僕を制止した。
「せっかくここまで着たんだから、私も。ね?」
彼女は車のドアを開けて、ロングブーツを履いたまま砂浜の方へ駆けて行った。
 
染めすぎちゃった。と照れながら言っていた彼女の栗色の髪が2月の浜風を楽しむように揺れていた。
僕は暖房の効いた車の中で彼女の髪が風に合わせて踊る様子を眺めていた。
トイレに貼ってあるムーミンの2月のカレンダーに書いてあった通り、春はもう、そこまで来ているようだった。

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