遥かなる想い
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2012年08月13日(月) 秒速5センチメートル〜貴樹と明里の交差した手紙

【秒速5センチメートル】
(第一話 桜花抄)






(前後未成)
















【貴樹の風で飛んでいった手紙】

大人になるということが具体的には
どういうことなのか
僕にはまだよくわかりません。
でも、いつかずっと先にどこかで偶然に明里に会ったとしても、
恥ずかしくないような人間になっていたいと
僕は思います。
そのことを僕は明里に約束したいです。
明里のことが、
ずっと好きでした。
どうか、どうか、元気で。さようなら。



【明里の渡せなかった手紙】

貴樹くんへ

お元気ですか?

今日がこんな大雪になるなんて、
約束した時には思ってもみませんでしたね
電車もおくれているようです。
だから私は、貴樹くんを待っている間にこれを書くことにします。

目の前にはストーブがあるので、ここは暖かいです。
そして私のカバンの中にはいつもびんせんが入っているんです。
いつでも手紙が書けるように。
この手紙をあとで貴樹くんに渡そうと思ってます。
だからあんまり早く着いちゃったら困るな。
どうか急がないで、ゆっくり来てくださいね。

今日会うのはとても久しぶりですよね。
なんと十一ヶ月ぶりです。だから私は実は、すこし緊張しています。
会ってもお互い気づかなかったらどうしよう、なんて思います。
でもここは東京にくらべればとても小さな駅だから、
分からないなんてことはありえないんだけど。
でも。学生服を着た貴樹くんもサッカー部に入った貴樹くんも、
どんなにがんばって想像してみてもそれは知らない人みたいに思えます。

ええと、何を書けばいいんだろう。

うん、そうだ、まずはお礼から。
今までちゃんと伝えられなかった気持ちを書きます。
私が小学校四年生で東京に転校していった時に、
貴樹くんがいてくれて本当に良かったと思っています。
友達になれて嬉しかったです。貴樹くんがいなければ、
私にとって学校はもっとずっとつらい場所にになっていたと思います。

だから私は、貴樹くんと離れて転校なんて、
本当にぜんぜんしたくなかったのです。
貴樹くんと同じ中学校に行って、一緒に大人になりたかったのです。
それは私がずっと願っていたことでした。
今はここの中学にも慣れましたが(だからあまり心配しないでください)、
それでも「貴樹くんがいてくれたらどんなに良かっただろう」
と思うことが、一日に何度もあるんです。

そしてもうすぐ、貴樹くんがもっとずっと遠くに引っ越してしまうことも、
私はとても悲しいです。
今までは東京と栃木に離れてはいても、
「でも私にはいざとなれば貴樹くんがいるんだから」って
ずっと思っていました。
電車に乗っていけばすぐに会えるんだから、と。
でも今度は九州のむこうだなんて、ちょっと遠すぎます。

私はこれからは、
ひとりでもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。
そんなことが本当にできるのか、私にはちょっと自信がないんですけれど。
でも、そうしなければならないんです。
私も貴樹くんも。そうですよね?

それから、これだけは言っておかなければなりません。
私が今日言葉で伝えたいと思っていることですが、
でも言えなかった時のために、手紙に書いてしまいます。

私は貴樹くんのことが好きです。
いつ好きになったのがはもう覚えていません。
とても自然に、いつのまにが、好きになっていました。
初めて会った時がら、貴樹くんは強くて優し男の子でした。
私のことを、貴樹くんはいっも守ってくれました。

貴樹くん、あなたはきっと大丈夫。
どんなことがあっても、
貴樹くんは絶対に立派で優しい大人になると思います。
貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、
私はずっと絶対に好きです。

どうがどうが、それを覚えていてください。




(第二話 コスモナウト)






(第三話 秒速5センチメートル)






江彰 透 |MAIL

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