2005年03月26日(土)
インドの会社に勤めて - トウショウ



久々です。ほんと忙しくて日記をほとんど書かなかったですね。というか、心に余裕がなかったといったほうがいいかもしれません。

今日は会社に勤めてトウショウの考え方がどう変わったのか書きたいと思います。インドと関係ないっていわれればそれまでですが、まあ一応インドの会社ってことで。

トウショウが、インドの会社に入社したのは6年前です。会社は製造業を営んでいます。入社当初は、日本人の出向者のサポート業務が中心でした。

サポート業務の中で製品開発のフォローとかもするんですが、「おっしゃー、頑張るぞう」みたいなのりで、さくさくと仕事をこなす自分からすると、インド人って仕事は遅いし、時間どおりに仕事を上げないし、投げた仕事も忘れることが結構あるし、詰めが甘いし。はっきりいって仕事ができないってイメージがありました。そんなもんで、トウショウとしては、計画立てて責任者決めて何度もフォローしてプッシュしてやらせるのが管理職の仕事だと思っていました。かなり強引で強圧的なやり方をしていたときもありました。

トップはインド人だったのですが、改善とか企業風土とかにあまり理解というか興味を示さない人で、とにかく金をつかわない主義の人でした。

わたしが何かしようとすると、なんでやるの?その効果は?もっと安くできないの?ということをいちいち細かく突っ込んできて、最後には、「わかったよ。様子をみよう。」などと丸め込まれる始末。こんなわけでトウショウの改善費用の決済はほとんど通らないか、非常に長期にわたって彼のテーブルに放置された後にサインされたのでした。そういう情報自体を知ることは確かに必要なんでしょうが、これをやることによってやりやすくなるのは目に見えているのに、そういった形のコミュニケーションの取り方をされると、相手にやる気を起こさせるどころか、この人は協力的でないというネガティブなメッセージを相手に送るだけになるというのがわかってない人でした。

しかし、日本からは、どう改善進んでる?ってチェックされるし、業務をちゃんとフォローしてないと突っ込まれるので、間に挟まれてましたし、まあどうにか、そのプレッシャーを利用して改善を進めていたという感じでした。

しかし、ほんとに、このトップはやる気ないって感じで。朝も11時くらいに会社に来るので、社員も10時くらいに出社。直属の上司は日本人だったのですが、現地の人は、いつか帰ってしまう出向者ではなく、やっぱり最後は自分の人事権をもっているインド人トップの顔色をうかがってしまいますね。そんなわけで、改善とかやっても全然進みません。

まるで流れのない川。水溜り状態・・・。

与えられた仕事以外に自分で改善の仕事を探してやってましたけど、費用の決済が通らないと進まないので暇でした。ほんとうはやらなきゃまずいのに、でも暇っていう、このジレンマほど精神に苦痛なことはないですね。

そんなの、がんがん主張して正しいことやったらいいじゃん。っていう意見もあるかもしれませんが、一度なんでサインしてくれないんですか。たかだかサインではないですか?っていったら。むっちゃ怒られて、俺の仕事を定義するな!おまえは自分の仕事だけをやっていればいいんだ。って怒鳴られたので、直に主張するのを止めて、リードタイムは長いですが、直属の上司である日本人を通して改善を薦めることにしました。

まあ、あんまり変わりませんでしたね。なぜなら社長のサインがないとなにも進めないからです。

そうこうしているうちに、去年、トップが交代しました。トップはオーナーの息子です。

しかし、会社にほとんど来ないし、きても現場にはあまりいかないし、PCの前でなんかして帰っていきます。まあこれが典型的なインドのトップのスタイルなんでしょうね。

このオーナーと一緒に送られてきたのが今の私の直属のボスでインド人です。
トップがこんな感じなので、実務はこのボスがすべて仕切ってます。この人が来てから、トウショウはこの人の直属で企画の責任者となりました。業務内容は、組織を変えるためのプロジェクトの推進です。外部からもコンサルタントを呼んでやっています。組織を変えるといってもハード的なものがメインのものです。ただし、権限はなし。私は提案はしますが、このボスがすべて決めるというものです。

さて、この新しいボス、仕事がよくできる人なんでしょうね。部下にもムチャクチャ仕事をさせます。頭の回転も速い。経営書をよく読んで、セミナーにも参加したりして、勉強しています。いろいろ新しいものをどんどん試そうします。そんなもんで、がんがん、仕事が飛んできます。しかも本人も非常に長時間仕事をします。(まあ長時間仕事するのがすごいかどうかは別として・・・)朝は定時前に来るし、夜は残業組の最後の方で帰ります。

こんなわけで、今まで朝10時にきていた社員は定時が9時にもかかわらず、朝8時半にくるようになりました。まあ、これはこのボスに来いって命令されたからですけど。

夜は、いつも定時5時半きっちりで帰っていた社員が7時まで誰も帰らない状況になりました。というか仕事が増えたし、上司も帰らないのでやらざる得ない・・・。このおかげで、会議は前より集まりがよくなるし、改善もガンガン進むし。工場も前に比べたら非常にきれいになりました。

川に例えると足をすくわれるような激流ですかね。

水溜りから激流にいきなりシフトしてしまうこのやりかた。さすがインドというか極端だなあと感じました。

で、ここだけ見てみると、なんだ会社にすごい活気が出てきて良かったじゃん。もう大丈夫。なんて思う方もいる人もいるかも知れません。

ところが、内情は、社員は不満だらけ。トウショウが推進するプロジェクトへも社員のからの反発がつよく、会議を召集しても“仕方なく参加してるんだけど、早く終わってくれ。俺たちの仕事を増やすな”というオーラが充満している状況でした。今まで8年も10年も仕事してきたキーパーソンは次々とやめていくし、まだ残っている人も職探しをしているという状態です。

自分は楽しく仕事をしたい、ただそれだけなんですが、なんで苦しいんだろう?確かに会社は変わったのですが、なにがいけないんだろうか?と真剣に考えました。
変化が早すぎたのか?どこでも不満はあるし、きりないよっ・・って済ませることもできます。

いろいろな意見があると思います。これだけが正しいというつもりは毛頭ないのですが、トウショウが思うところを書きます。

今の状況と前の状況を比べると表面上あきらかに会社はよく変わったといえます。
経営者もやるき満々ですし。

でもほとんど変わってないものがあります。

それは意思伝達のプロセスと経営への社員の信頼感の無さです。

前も今も、結局、上司が目標やノルマ、方向性や手法の一方的に指示・命令して、部下はそれをフォローするだけ。見た目は、みんなで話し合って決めたという形になっていますが、話し合いの中身は、上司がほとんど一人で一方的に意見をしゃべって、部下はただ聞いているだけ。しゃべらない。しゃべれば、逆らっていると取られるし。上司の方が経験も知識もあるので、間違ったことを喋れば悪い印象を与えかねないという恐怖心があります。しかも、仮に意見をいっても、上司の都合のよい形に丸め込まれ、上司の意向に沿う形に変えられてしまう。このため、言った人が損をするという恐怖心と不信感はますます確かなものになります。

こういうプロセスを踏んでいる限り、一時的にコンサルタントを呼んだりして、活動は活気を帯びるかもしれない。コンサルタントがいなくなれば、全く元には戻らないでしょうが、活動はかなり形骸化します。そして長くはもたないでしょう。

みんなが意見をいわない。いいアイデアがでない。環境の変化が激しい今の世界で、上司が一人で決めている、または結果的に決めてしまっているような会社は、変化についていけなくなって、絶対につぶれると思います。

理想論という批判を受けるかもしれませんが、トウショウがいろいろと本を読んで、模索して、たどりついたあるべき姿は、

1. 上司と部下の壁を取り除き、互いの話をよく聞きあい、人を責めるのではなく、問題である事柄を攻めるということを外さすに、押し付けではなく、全社員が互いに腹を割って今の会社に存在するすべての問題と解決策を気軽に話し合あう。
気軽にというのは、間違っているのではないかと意見も躊躇なく話し合えるという意味です。

2.問題の起きている現場に近くて勘の働く人が責任者として、周りに相談しながら1人で決済できるようにする。

3.各自が勝手に決めるとコントロールを失う恐れがあることと、決定が間違っている恐れがあるので、1.の気楽に腹を割って相談できるネットワークを通して、情報を得ややすいようにし、決定が間違っていてもすぐに直せるようにする。

4.ヴィジョン(決定の判断基準)がないと、責任者が各自のヴィジョンでバラバラの方向に進むので。1. のネットワークを通して社員自らがヴィジョンを作るプロセスに参加しながらヴィジョンをつくる。

5.ネットワークをサポートするキーパーソンを何人も育てる。キーパーソンの基準は、頭の回転が早いとか仕事の処理能力が高いに関係なく、人の心に敏感で問題意識が強い人。管理職でこういう人がいればよいと思いますが、管理職にこだわるのは非常に危険です。あくまでも人本位で探し、育てるべきです。

このことを実際に組織で実行するために、経営者はインフラを整えるとともに、自分自身もこのネットワークを通して社員と一緒に成長していこうという姿勢で社員と接するように変化しなければいけないと思います。

そんなの、大変な中でも頑張れない社員が悪いっていう意見もあるかもしれません。でも誰もが劣悪な環境で3rdギアーや4thギアーで走れるとは限りません。1stでしか走れない人のほうが多いと思います。ところが周りからあいつは遅い、役に立たないと言われている人が環境がよくなると4thギアーで走れるようになり、しかも前者よりも早く走れることができるというのはよくあることです。

この考えはまだトライされてませんが、ボスには一部話しましたし、同僚にも話しています。そうして少しずつ受け入れられる下地というかうねりを作りながら、導入の仕方を勉強している状態です。

ちなみに私の下には現場の作業者から引き抜いた2人の改善員がいます。彼らとのやり取りに、上記のことにに近いことを実践してみましたが、設備の油漏れを激減させ、スペースを節約し、工場の中間在庫を減らすなど、以前の彼らからは想像できないような、能力を発揮しています。なによりも彼らの目のいきいきとした輝きが違います。

ということで、当初インド人を管理し、彼らが仕事をしやすいようにサポートするのが管理職の仕事だと勘違いしていたトウショウは、変化にも柔軟に対応しながらチーム一丸となって前へ進む組織を志向するにいたったのでした。

こんなの当たり前じゃんという人もいるかもしれませんが、
この当たり前のことを実践はおろか、考えたこともない管理職の方っていまだにいるんじゃないかと思います。

トウショウのこの失敗例が、これからインドの会社へ就職されて、いずれ管理職になられる皆さんの参考に少しでもなればと思います。

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