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カンパニー松尾はポール・ウェラーか? - 2002年05月06日(月)

正直な話、AVなんてのはヌケればいいわけですよ。
スタイルばつぐんのおねーさんが、乳揺らしながら騎乗位して、
口角泡飛ばしながら「いぐ〜!」みたいなさ。

でも、そうでもないんだよね。
もちろんヌケるのは大前提としてあってさ、
そこに「共感」とか「笑い」とか「関心」とか、そういうものが合わさったとき、映画・ドラマ以上の感動が生まれると思うんだ。
僕にそれを教えてくれたのは、
カンパニー松尾監督の「私を女優にしてください」というAVだった。

この作品は、AV出演希望の素人娘に松尾さんが会いに行くというシリーズ物。
一見すると、全国津々浦々のおねーちゃんをハメながら、
土地の名産を食らってるだけなんだが(笑)、
その端々に松尾さんの心情が吐露されてる。
これがすごくいいんだよね。
本気で恋をしてみたり、
なんで君みたいな子がAVに出ちゃうの?なんてマジで考えてみたり。
テレコミですっぽかしくらえば落ち込むし、
ニルヴァーナのカートが死ねば素直に追悼しちゃう。
そういう等身大の男の感情みたいなものが出てて、すごく共感したの。
AVって彼岸の世界と思いがちだけど、実はそうじゃないんだ!って。
しかも、アレにはまいったね。
ちょうど5年くらい前になるんだけど、松尾さんは一回、AVを引退するのね。
で、「私を女優〜」の中でこう語るんだわ。
「僕はAVを辞める。
 前から30歳になったら会社をやめようと思っていた。
 理由は特にない」
「僕はソニーHi8(カメラ)に感謝する。
 歌うことのできない僕でも歌えた。
 ギターが弾けない僕でも弾けた。
 僕はソニーHi8に感謝する」
かっこよすぎ。
まるでTHE JAMを解散させたときのポール・ウェラーみたい。
オレが趣味でハメ撮りしてる理由がなんとなくわかるっしょ?(わかんねーか)

ところが、ここ数年の松尾さんの作品には、
前のような「熱さ」が感じられなかった。
実際売れてるし、クオリティの高い作品ばかりなので別に悪くないのだが、
いい女を目の前に衝動を抑え、
機械的にいい絵面を追っているだけのようにも見えた。
自分のことを語ってよいはずの「私を女優に〜」ですら、
何かこう奥歯に物が挟まったような、煮え切らない感情ばかりが渦巻いていた。
だから今回で「私を女優に〜」が終わると聞いたときも、
あまり意外ではなかった。
その中で松尾さんは、こんなことを語っていた。
「旅の必然性、
 出演女優の特殊性、
 ハンディカムの機動性、
 AVの可能性、
 僕の叙情性、
 右手がそれを感じない。
 流れぬ汗のもどかしさも、
 辻褄あわせの小手先に、
 もう何も語るべきではない」
相変わらずかっこいい。
でも前に引退を決意したときのような、衝動的なものではない。
自分を冷静に分析し、答えを出している。
最初に見たときは、
もしかしたら今回こそ本当に引退してしまうのではないか?と思ったほどだ。

だが僕のそんな思いは取り越し苦労みたいだ。
先日、ある筋から松尾さんがインディーズAVレーベルを立ち上げるかもしれない、
という話を聞いた。
もう、依頼されたような作品は作らない。
作りたい作品だけを作る!とも。
代表作「私を女優に〜」を封印した松尾さんは、
今、新しいステージに向かおうとしている。
そこにスタイル・カウンシル解散後、
インディからソロ・デビューしたポール・ウェラーの姿を重ねてしまうのは、
僕だけだろうか。









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