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2004年 桜とか
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2004年08月11日(水)

淡々

淡麗 って新語なんだ。知らんかったよ。
ちなみに反対語は 濃醇 。
だから何だってわけじゃないけど、なんとなく。

本日は14時からお御施餓鬼だった。
昼になってシャワーを浴びて銀行で振込み。
お花と、ついでにサンドウィッチを買って車で食べつつ親の会社まで。
お土産の赤福を店の方の冷蔵庫に入れるべく、裏口から入り込み。
出てきた所で、隣の店の奥さんと目があって挨拶。
きっと、不審者に見えたに違いない。
私の顔を分かってるかは疑問だけど、まぁ堂々としてたから大丈夫でしょう。

ウーロンハイ、煙草、お線香、花を持って徒歩で寺へ。
マナーがなっとらん人が多い。
小さな小さなお寺の入り口を平気でふさぐ自転車。
お墓への道をふさぐ状態で止めた車。
いっぱいいっぱいになってて、止めてる時に木がバキバキいってた。
運転がヘタクソなんだろうなと入り口から見てて思ってたけど。
思わず、根っこを踏まれてる木に同情。
っていうか。お寺とかの有り難味もクソも無いよな。

今年で4回目のお施餓鬼。すっかり慣れたもん。
父上のお隣さん(新盆)の奥さんと初対面。
「私、綺麗好きなもんだから、ごめんなさいねぇって言って掃除してるのよ」
お墓に毎日通ってきてるらしい。
そして、お隣の父上に詫びつつお掃除をしてくれているそうだ。
そういうの。父上はあまり好きじゃ無い事は確か。
いかに母上がズボラかが目立つのと、人に世話を焼かれるのをうっとおしいと思う人だから。
でも、生前父上は「あまり墓に行くもんじゃない。ゆっくり眠れないから」と言ってたそうなので、今の母上と私の月一ペースに問題は無いんだけど。

お施餓鬼が始まる前に御墓に花をと思ったら、上の二つは母上が既に入れており。
下の二つは水さえ取り替えて無い状態。
バケツに水を汲んで入れ替えて買ってきた百合を入れてお寺さんに入ったんだけど。
お経の最中でふと思い出した。
水持ちが良いように入れておいた10円玉、さっき見たっけか?

お施餓鬼が始まる少し前、母上のピアスに絡まる髪の毛を見て、何かの弾みでピっと引っ張って耳たぶが切れないだろうか?と怖い想像を。
そう訴える私に母上は、「大丈夫だよ」と笑う。
いや、大丈夫に見えないと、思わず一本ずつ絡まった髪を丁寧に取る私。

お施餓鬼の最中に、ふと見た母上の足の皮がむけてるのが気になり。
ついつい指でカリカリと母上を足をひっかいてみる。
母上は無言で「そうなのよ。むけてるの」ってな感じで頷く。

こういう事をする度に、子供の私が今の母上と私の関係を想像出来ただろうか?と考える。
20歳の私ですら、全く想像できなかった。25歳の私でも。
父上に、もっと沢山こういうシーンを見せてあげたかったと思う。

小1時間で一通り終ってお墓に戻った所で母上が
「あら、お父さんがお金くれたよ」
と言うので、また何言い出したんだかと思って振り向くと、その手に変色した10円玉。
紛れも無く、それは私が入れておいたものだ。
水を入れ替える際に、すっかり忘れて10円も一緒に地面に撒いたらしい。

お線香と煙草を供えて、「おじじ、またね」と手を振ってお寺を後に母上と店へ。
店で赤福を開けて食べてみる。初赤福。賞味期限が昨日の赤福。
ちょっと固くなっちゃってたけど、こりゃ美味い。
御飯を食べに行く事になってたので二つで終了。
母上からは、北海道から送られてきたというトウモロコシをもらった。
袋に氷を入れてくれるなんざ、なかなか母上のくせに気が効く。

家の側のファミレスにそれぞれの車で立ち寄る。
二人して全く同じメニューを頼む。

とある若い夫婦仲について意見を求められてみたり。
知り合いのおじちゃんが今日手術だという話を聞いてみたり。

父上の痛みが酷かった夏。
「どんなに痛かったんだろうねぇ。」
母上に言われるたびに困る私。
「さぁね。そりゃ、よっぽど痛かったんだろうよ。」
それ以外に答えようが無い。
眠るのを怖がった父上は、痛み止めを増やす事を嫌ったんだから。

父上と同じぐらいの時期に癌になったオバちゃんが、今も元気だと母上が言う。
「お父さんの癌は悪い癌だったのかねぇ」
「そんな事は無いよ。おとんだって長い方だと思うよ」
「そうだよね。」
母上の中には、なんで父上が苦しんでとか、なんであの人は元気なのにとか。
そんな妬みのような感情が渦巻いている。
きっと、捌け口がそこになる思考回路なんだろう。

悲しみは怒りや妬みになり易いというのは、父上の時に嫌というほど知った。
知ったから、私は方向を間違えないように事実だけを見る。

お盆近くになると微熱が出ることが数年前から、たまにある私。
これは父上が亡くなる前からの事。
母上は、毎年肩が痛くなる。時には腰も。時には高熱。
「それ、乗ってるから」と脅しても、
「そうなのよー。」とケタケタ笑う母上。

私の引越しの話から、弾みで母上が言い出した。
「私、いるから。あんたも分かってるだろうけど」
いや、おかん。分かってませんでした(笑
分かってなかったけど、どっちでも良いことだ。
「たまに御飯とか食べに家にも来てるからさ。言おうと思ってたのよ。」
「相手にも娘が来るって言ってあるんだけどね。」
「ああ、俺、突然行くから」(母上の前では時々俺と言う)
「電話してきた方がいいと思うよ」
少し照れたような顔で笑ってる母上に対し、私も笑いながら
「いや、突然行くから」
と言い切る私。

突然行って、その人が居た所で何も変わらぬ自分が想像できるし。
普通に挨拶をして、きっとその後は、その人が居ない状態の振る舞いをするだろう。
父上の仏壇に線香を上げる私を、複雑な気持ちでその人は見るだろう。
付き合うことに反対はしない。
人に頼る事が平気な母上の面倒を見てくれているおかげで、娘の私は肩の荷が少しでも楽になっているのだから。
ありがたいぐらいだ。
でも、少し後ろめたさを感じてて欲しい。
微妙な娘心。勘付かれない程度の意地悪。

母上は、父上が焼きもち妬きだからと笑ってた。
「でも、ちゃんとやるべき事はやってるからいいの」と。
「あんたは、大丈夫よ」と。
私は父上に守られてるとは思って無い。
ただ、父上が私に罰(バチ)を与えたりはしないという自信だけはある。
それなりに一番父上孝行して恩を売っておいたから(笑
父上から受けた恩は、毎月の墓参りでコツコツ返すさ。

やっと話せてスッキリしたのか、母上はすっかり日常モードに戻り。
塔婆代の代わりに、ここは奢るという私に「もう、店の時間だ」といそいそと先に店を出て帰っていった。

車に乗って走り出してから、なんとなくジンワリ目水が込上げ、すぐ引っ込んだ。
家について二回も電話してきてたお相手に電話をかけた。
「熱があって倒れてるんじゃないかと心配したよ」
相変わらず暇だと必要以上に心配する奴だ。
というか、暇なので話し相手が欲しいだけの口実ともいう(笑
話ついでにお相手に、「おかんったら彼氏がいるらしいよ」と笑って話したらまた込上げ、すぐ引っ込んだ。


母上がどうこうじゃなく。付き合ってる相手がどうこうじゃなく。
家に入れてる事が気に入らないとか、そういう事でもなく。
父上が居ないという現実を目の前に突きつけられるのは、やっぱり私は苦手なんだ。
それは、現実を拒否してる訳じゃなく。
何事も自然に穏やかに受け入れていきたいという。
私の我儘だ。


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