浪奴社員の呟く
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浮かぶ風景というお決まりの題材で、彼女が記したものは、今になって取り立てて語るほどのものではなかったが、それは自分を見つけられずにいることを知っているが故の、大人びた文章だった、と記憶している。
幼い頃の記憶を辿りながら、今はあの頃の光景が変わってしまうことの功罪をそれとなく述べていたように覚えている。一言で片付けるのなら、上手いがつまらない文章だった。然しながら、自分を見つけられずにいることを知っているのであれば、何時れは必ず届くであろう、誰もが避け得ぬ行程であったように思われ、その後確かに彼女は自分に到達していた。
一つのことを終えた表情を見せ乍ら、弾けるように手を振る姿に、普通の高校生としての在るべき姿を見たように思った。それは、自分を見出し、自分に触れてくれる仲間の存在を認めた上での、「楽しんでいるんだろうな」安堵を覚えた瞬間だった。
心を示さなかったのは、自分が見えないことの不安からであって、そうでないのなら今になってあんな風に振る舞うこともないのだろう。結局は自ら手にするものであって、誰かに与えられるものは紛物で、贋物に入れ込むほどの愚かしさは持ち合わせてもいないと信じているので、きっと望む姿に近付いている証左なのだろう。
これからは、その年月を懸けて手にしたものの価値を量られる時間帯が長く続いていくことだろうから、其れまでの自分を否定することの無いように、強く太い自分を抱き続けていて欲しい。目先に囚われず、その果てを感じ取る鋭敏さを忘れずにいて欲しい。流されることのないように、その存在感を失うことのないように。
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