窓のそと(Diary by 久野那美)

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2004年08月20日(金) こまだいとまこまい。

13時ちょうどにはじまった夏の高校野球準々決勝をテレビで見ていた。
駒大苫小牧 対 横浜。
北海道と神奈川。
マイナー校と人気プロ選手を排出している名門校。

名門校の試合では、マスコミの情報はどうしても名門校の方に偏るので、ついつい「話題の<あの>チームが勝つか?負けるか?」
という報道になりがちだ。
今回も、横浜が、若手のホープ松坂選手の出身校であることもあって、それを効果的に利用して感動を盛り上げようとする意図がみえていたような気がする。いつものことなので、あまり気にしないで見ていたのだけれど・・。

今回も、例に漏れず、定番の台詞が吐かれた。
「横浜高校にはすばらしい先輩がいます。彼らは今、オリンピックで世界を相手に戦っています!」

それはそうなんだけど、それはたしかにそうなんだけど・・・う〜ん、これが名門校って奴、伝統ってやつですな・・・と思って見ていたら、
ちゃんと次の台詞があったのだった。

「駒大苫小牧にも、すばらしい先輩たちがいました。先輩たちの流した涙の上に、今、彼らがいます。」

よくききとれなかったのえにうろおぼえだけれど、そんな感じの台詞。
ちょっといいなと思った。

マイナーチームにはマイナーチームの歴史があり、そこからしか得られなかった現在があるのだ。たとえ伝統の前にあっけなく崩れて去ろうとも・・。
そのアナウンサー、場が持たなくなると、「勝負は下駄を履くまでわかりまえんっ!」ばっかりくりかえしてて、他に言うことないのんか?
と思っていたのだけれど、その台詞でちゃらにしてあげようと思ってしまった。

しかし。
予想に反して、こまだいとまこまい、
この、呪文のような名のチームは強かった。

ときに豪快な、そして全てにおいて隙のない落ち着いたプレーで、
最初から最後まで主導権を手放さなかった。

こまだいとまこまい。
こまだいとまこまい。

横浜も名門の意地を見せ、両チーム大奮闘のとても感じのいい試合だったけれど、結局差は最後まで縮まらず、こまだいとまこまいの勝利に終わった。
それは北海道の高校にとって、実に76年ぶりの準決勝の快挙だった。

ドラマチックかつ記録的なすごい試合を見てしまった・・・。
縁もゆかりもなかったはずのチームなのだけど、
たぷたぷと満ちてくる充実感を感じた。
勝手に感じていた。

            *****
試合の後、すぐ、家を出て大阪へ向かった。
実は「この試合の後で大阪で」という待ち合わせをしていたのだ。
24時制は非力なので、時計の代わりにテレビで試合を見ていたのだった。
待ち合わせの相手は今日、件の試合を見るために甲子園へやってきた北海道出身の知人。

大阪駅で落ち合って、そのままたこやきとお好み焼きを食べに天神橋へ。

「彼女、大阪はじめてなの。」「ほっかいどうから来たの。」「甲子園に応援に来たの。」という台詞は魔術的な効果があり、たこやきは増量され、ビールには枝豆が添えられ、メニューにない「トマトスペシャル」なる料理を作ってもらった。

今日彼女とお好み焼きを食べに行ったことで、
私の充実感はさらに倍増された。
なんだかわからなけれど、ものすごい得をしたような気持ちがしている。
何の充実感が倍増したのかは難しいところだ。

彼女と会って過ごしたことなのか?
それとも
遠い、見知らぬチームの勝利をたまたまテレビで見届けたことなのか?
書いてみたらわかるかな、と思ってのだけれど、やっぱりよくわからない。

こまだいとまこまい。

なんにせよ。
この呪文はこの先しばらく頭から離れないような気がしている。


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