窓のそと(Diary by 久野那美)
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<ほんもの>ははじめからそこにあって、あるのがあたりまえだった。 <にせもの>ははじめはどこにもなかった。ないのがあたりまえだった。 だけどそれでは困ると思っただれかが、ほんとうはないはずのものを創ってしまった。
<にせもの>の出現によって、 「在る」ということは、そうそういつもあたりまえではなくなってしまった。 世界は「在ること」からはじまるときもあれば、「無いこと」からはじまることもあった。 あたりまえに「在る」のは<ほんもの>だけの特権になった。
何故在るのか。どこに在るのか。<にせもの>は問い続けた。 答が尽きれば<にせもの>はあたりまえの姿にもどる。 ないと困る誰かのところにだけ、ないと困る間だけ、「在る」ことができた。
「在ること」から始まる世界では何も問われなかった。 <ほんもの>はいつもはじめからそこに在った。
それ自体が答だった。
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