窓のそと(Diary by 久野那美)

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2000年10月27日(金) 理想的な現場について  

山羊の階は…。
よくも悪くも、ものすごくマイペースなひとが多い集団です。
役者さん3人は特に強烈です。
これまでにも、いろんな稽古場で、「宇宙人」とか「妖怪」とか言われてきたひとたちです(?)。このひとたちと毎日一緒にいると、何が普通のことなのかわからなくなってきます。

私も集団作業の現場ではみんなに迷惑をかける方なので、協調性のなさや正確な作業の苦手さに激しいコンプレックスを持っていたのですが、山羊の階が始まってからはあまり考えなくなりました。
ここでは私も標準レベルをクリアしているような気がします。(彼らのように、欠点を補ってあまりある魅力には欠けますが…。)

それで安心していてもいいのか。と思いつつ、人間どうしても楽な方へ流されるものです。みんなで安心しあっています。

さらに。
全員がそんなだったらさぞかし現場が混乱していると思われるでしょうが、よくしたもので、ちゃんとそういうことに長けたひとが居て、できない人の分までがんばってくれています。ここが素敵なところです。

地図が読めて、
チケットがまっすぐ切れて、
書類を失くさずに保管できて、
突然眠くなって意識が飛んだりもせず、
食べ物の賞味期限にも気を配れ、
床にコーヒーをこぼさない制作の中村君は、
いつもみんなから「えー?ほんとに?すごいねえ。」と異端視されながらも大変重宝されています。

必然的に彼の仕事はどんどん増えていきます。
みんな、バランスや正確さを要求される仕事が必要な時は、いまや勝手に手を出したりせず、中村君がくるのを待つようになりました。

「どんな仕事もいちばんの適任者が担当すること。」という山羊の階の階則がありますが、それにもちゃんと合致しています。

「嘘?!なんでできないんですか?」
といいつつ、着々と仕事をこなしてくれる最年少の制作さんを、みんなほんとうに尊敬しています。そういうひとが集団を現実的に支えているのです。

できないことはできるひとにやってもらって、やってくれる誰かを「すごいなー」と思っていられる状態って、いちばん理想的な状態じゃないかと私は思います。

誰も困らないし。みんな得するし。みんな気分いいし。効率もいいし。

そしてそれはもちろん。
その誰かにできないことは、他の誰かがどこかでちゃんとできなくてはいけない、ということでもあるのですが。


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