窓のそと(Diary by 久野那美)
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はじめて「演劇」に会ったのは15年前。あの時は、世界がひっくりかえるほどびっくりした。「ことば」の概念も、世界と一緒にひっくり返った。 ということは。世界というのはことばのことだったのか…。
そこではあらゆるものが「ことば」だった。 光の色、光の方向、音の大きさ、音の種類、ものがうごくこと、ものが動かないこと、何かが見えること、何かが見えないこと、重力、ものが倒れること、ひとが振り向くこと、風が吹くこと…。 人間と、人間でないものと、ものでもないものとがみんな、同じ資格を持って違うことをしている場所だった。 その場所はとても広くて。なにかがそこに在るために、他の何と争う必要もなかった。だから競争のない場所だった。すべてのものが、つまりことばが、みんな、より所なく宙に浮かんでいて、風がゆらゆらとそれらを揺らしていた。
あれから15年たった。 私は今でも。そういうのを「演劇的」というのだと思っている。 だから演劇っていいなと思う。
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