窓のそと(Diary by 久野那美)

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2000年10月17日(火) えんげきのことば

はじめて「演劇」に会ったのは15年前。あの時は、世界がひっくりかえるほどびっくりした。「ことば」の概念も、世界と一緒にひっくり返った。
ということは。世界というのはことばのことだったのか…。

そこではあらゆるものが「ことば」だった。
光の色、光の方向、音の大きさ、音の種類、ものがうごくこと、ものが動かないこと、何かが見えること、何かが見えないこと、重力、ものが倒れること、ひとが振り向くこと、風が吹くこと…。
人間と、人間でないものと、ものでもないものとがみんな、同じ資格を持って違うことをしている場所だった。
その場所はとても広くて。なにかがそこに在るために、他の何と争う必要もなかった。だから競争のない場所だった。すべてのものが、つまりことばが、みんな、より所なく宙に浮かんでいて、風がゆらゆらとそれらを揺らしていた。

あれから15年たった。
私は今でも。そういうのを「演劇的」というのだと思っている。
だから演劇っていいなと思う。



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