「いきなり崩落した。アッという間だった。」
「ドスン、ドスンと雪崩のような音がして、真ん中と側面の雪が2回、崩落した。」
「水がたれて冷たいうえ、危険という認識があった。」
「固い雪なのでいきなり崩れ落ちるとは思わなかった。早く出ていれば……。」
「崩落後、沢の水が一気に胸の高さまできた。必死で三脚で雪を崩したところ、空洞が見つかり、そこから脱出した。」
「ドーム状のトンネルになった雪渓には太陽光が明るく差し込み、写真愛好家にとっては魅力ある場所。訪れるのはハイレベルな人ばかり。我々の間ではよく知られている。」
「いつ崩れてもおかしくない状態。山菜採りに出かける時も、絶対に雪渓の下はくぐったりしない。」
「豪雨と猛暑で雪が相当緩んでいたのではないか。登山家の間では、この時期は雪渓になるべく近寄らないようにするのが常識。」
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雪渓の中に入って撮影していた人たちを批判することは簡単である。やがて崩れるのは最初からわかっていたことだし、その危険なポイントに近づかないというのが通常人の常識なのだから。
問題は、そんな極みの場所に簡単に到達できることにあると思う。現地はキャンプ場のすぐ近くで、小学生がズック履きで訪れることも多い。今回は、たまたま雪渓の下に入っていた人たちだけが事故にあったので、彼らの『自己責任』を問う声が大きい。
巨大な閉鎖空間が最高のロケーションのひとつに数えられるのは間違いない。亀裂から光線が差し込み、人間の手の届かない到達点が容易に目の前に現れ、一部を切り取ることが許されたようなつもりになる。彼らは、危険を顧みずにその美しさに惹き込まれてしまった。
悪魔の囁きに簡単に騙されてしまうような、そんな魅力を持った場所なので、現地に向かうときは、より危険予知能力を研ぎ澄ますよりほかない。
【Referer】
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