華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
MAIL  PROFILE & GUEST BOOK  


 本文が読みづらい場合、
 Windowを最大にして
 お楽しみください。

 +お知らせ+
 表紙にミニ伝言版開設!ご覧下さい。




-past- +elegy INDEX+-will-
2007年11月01日(木)

欠けたる月の兎。 〜待ち合わせた女〜



満月の夜。



月面には兎が飛び跳ね、楽しそうに餅をついていると教えられ、
幼い頃の俺はそう信じていた。


あまりにも突飛な、大人の作った寓話を真に受けていたのは、
いつの頃までだっただろうか。


中秋の名月…
随分と汚れた、今の俺の瞳には、月に跳ねる兎が見えるだろうか。



俺はぼんやりと事務所の窓から見える、丸々とした月を眺めながら、
一人の女を思い出していた。




数年前の9月。


春日井市のファミレスで、一人の女と会った。



 「12時に入り口前で待ってるから」



待ち合わせの約束を取り付ける時。
やけにぶっきらぼうな言い方で俺にそう通告した。


約束の日、約束の時間。
時間通りに到着した俺。

女は入り口のドアの前で、遠くをぼんやりと気だるそうに見つめていた。

車から降り、女に声を掛けた。
女は遠くを見つめていた、そのままの眼差しをこちらに向ける。


安堵した俺は目元の笑顔を作る。
無表情な女は口元すら緩めない。



無言で店内に入り、昼食のセットを二つ注文する。


熱いお絞りで手を拭いた後、俺が話を切り出した。


「…がっかりしたの?」


あまりに無表情な女に、俺はそう思い、尋ねた。


 「そっちががっかりしたんでしょ?」


女はそっけなく答える。


それきり再び無言が続く。
話を切り出しにくい女だ。


軽やかな店内のBGMにもかかわらず、
俺と女は押し黙ったまま、重い時間が流れる。

その間に、俺たちの前に二人前のランチセットが並んだ。


「いただきま〜す」


ちょっと白々しく口にした。
女は口元を緩める気配すらない。



女の名前は、ウサギ。
テレコミの源氏名だ。


人妻のウサギと知り合ったのは、つい数日前。
利用したテレコミで話をした時だった。


テレコミでのウサギは非常に饒舌だった。
その話術に乗せられ、会う約束をしてしまったのだ。


今日初めて見た容姿。
お世辞にも美人とは言えない。


下膨れな顔にうつろな目つき、おまけに無表情ときては、印象も良くない。
容姿は俺も良くないので、贅沢は言わない。


しかし女の表情や仕草には陰鬱さがにじみ出ている。


何かと会話を切り出そうと、あれこれと話題を振ってみるものの、
返事もまともに返ってこない。


俺も珍しく戸惑っている。
会話が続かない。


単発な会話が幾度となく続く。
しかし中身に広がりも発展も無い。



 「決めたっ」
「何を?」



ウサギは唐突にそう切り出す。
俺が驚いた。


 「平良さん、私を思い切り抱いていいよ」
「おいおい、何を急に言い出すの?」

 「私ね、平良さんが本当はどんな人なのか、試してたの」
「どうやって?」

 「こうやって一生懸命話してくれるじゃない…主人とはえらい違い」
「…そうなんだ」

 「だから決めたの。私の初めての不倫相手になって」
「…」

 「食事が終わったら、インターの近くのホテルに行きましょう」
「…」


俺は珍しく、撤退を考えていた。

俺が退いていたのだ。
どういえばこの女とうまく切れるか…


しかしウサギは時間が経つに連れて、テレコミの頃の饒舌さが戻ってきた。
非常に浮き沈みの激しい所が見える。
実は俺が最も苦手な種類の人間だ。


「この辺はわからないから、案内してくれる?」
 「春日井インター脇のホテルにしましょう」


男という生き物は、目の前の好物を避けて通れないものだ。
俺はウサギに乗せられ、ホテル行きを受け入れてしまった。


ホテルにチェックインする。

ウサギはそのままバスルームに直行し、風呂に入った。
手持ち無沙汰な俺は、ホテルのパンフレットやCS番組を見ていたが、
ウサギを驚かせようと、風呂へ忍び込んだ。

特に好みな女じゃない。
どうせ一度だけの逢瀬なら、好き勝手やってやろう…

俺は服を脱いで、ウサギのいるバスルームに入った。

ウサギは立ってシャワーを浴びていた。
俺はそのままウサギを背後から抱き、乳房を揉みしだく。

ウサギは唐突にいやらしい声を上げた。


 「いやん、こういうの待ってたの…」

「こういうのが興奮するんだ?スケベ女!」
 「違うぅ、でも主人はわかってくれない…もっとぉ」


下半身から力が抜け、腰つきが危うくなる。

女としての反応がすごぶる良い。
俺も調子づいて、攻め続けた。

ウサギは俺の正面に向き直り、抱きついて唇を奪ってきた。
きついニコチンの匂いがする。
シャワーの湯気も相まって、息が詰まりそうだ。


しかし俺自身は鋭く反応している。
ウサギは見逃さず、掌で弄び始めた。


俺はウサギの両方の乳首を指先でつまみ、転がした。


 「あふぅ、うぅん…っやぁん…」


ウサギは脱力し、俺に枝垂れかかってきた。


「どうした?」
 「だめぇ、弱いのぉ…気持ち良過ぎるのぉ」

「乳首、弱いんだ?」
 「だめ、そうやって声に出されるだけで…おかしくなっちゃうぅ」

「もう濡れてるだろ?」
 「言わないで、恥ずかしいからぁぁ…ああん、あふぅ」


俺がウサギ自身に忍び込ませた右手中指が、粘液の存在を探り当てた。
指先から、かなりの粘着質な音が漏れる。

やはり、かなりの潤いだ。


「すげぇ濡れてる…」
 「お願い、欲しくなっちゃうでしょ…」

「じゃ、ここでする?」
 「いやぁ、ベッドでしてぇ…」


俺はもうしばらくウサギを焦らし、バスルームを出てベッドにもぐりこんだ。
反応は良い。
この後が楽しみだ…


 「お待たせ…お願いがあるの」
「何?」

 「バック嫌いなの、騎乗位も嫌。あとゴムは必ず、そして…」
「そして?」

 「お願い、優しく抱いて…」









<次号に続く>

☆今回は4話構成です。



My追加



Directed by TAIRA
©2002 TAIRA
All Rights Reserved.

ここに登場する女性・出来事は実話です。
Web上で公開するために脚色・演出してあります。

このサイトの全てにおける無断複製・転写を一切禁止します。
また、このサイトに掲載されている文章の全てにおける著作権は放棄しておりません。
商業誌、商用サイト等への転載および引用につきましては、
「華のエレヂィ。」メールフォームより
お問い合わせ下さい。

+ very special thanks +
Design by shie*DeliEro
thanks for Photo→Cinnamon







エンピツ