華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年10月11日(金)

18歳。 『分かんない』

<前号より続く>


パネルの写真では分からなかったが、
308号室は思ったよりもずっと質素で狭い部屋だった。

ダブルベッドと小さいソファがある以外、もう空きスペースがない。



「君は大人しいんだね・・・オジサン乱暴しないから、大丈夫だって〜」


上着をハンガーに掛けた俺はおどけた調子でドアの脇で立ち尽くす少女に話し掛けると、
その少女はようやく冷たく端正な表情をほんの少し崩した。


「・・・君、名前は?」
 「・・・・・・なんだっけ?・・・え、ユミカ?ユリエ?」

「覚えてないの?」
 「だって適当に本から選んでつけたんだもん」

「大丈夫かね?」
 「・・・あ、そう思い出した。ユキエ、ユキエ・・・『ごくせん』から採ったんだ」

「ユキエ、でいいんだね(笑)」 


早速、天然ぶりを発揮してくれた少女・ユキエ。
その後も彼女の個性は、色々な意味で俺を楽しませてくれた。


「ね、料金っていくらだったっけ?」
 「え?聞いてないの?・・・分かんない。私、覚えてない」


ユキエは料金も、プレイ時間も「分かんない」と連発する。
俺は携帯で店に確認するようにいうものの、今度は携帯を手にして何やら悩んでいる。


「どうしたの?」
 「・・・掛け方が分かんない」

「でもそれ、君の携帯じゃないの?」
 「今日の昼に店から貰ったばかりだから・・・」


ユキエの手には、彼女のプリクラやシールが所狭しと貼りまくられていた携帯電話。
店から支給されたのか、確かに新しい形のものではない。

俺がその携帯を受け取り、あれこれと弄っている間に
ようやく店の電話番号らしき着信履歴が表れた。

そのまま発進ボタンを押し、ユキエに手渡す。


 「あ、もしもし、ユキエですけど・・・時間や料金って、どうでしたっけ?」


店に確認の電話をしてようやく料金がわかったものの、ユキエはどうにも頼りない。

店の判断基準は受付の応対だけではない部分もあるものだ。


俺はユキエに色々な話を振りつつ、自らサービスに動かない彼女に痺れを切らして、
俺が自分で風呂の湯を張る。

42℃に合わせた蛇口から湯が勢いよく広めのバスタブに流れ出す。


部屋の備え付けのスナック菓子を何時の間にか平らげていたユキエは、
空腹が紛れたのか、何とか落ち着いた様子だった。



 「ねぇ、お兄さん結婚は?」
「してないよ、彼女もいないし・・・君は?」

 「う〜ん、分かんない」
「分かんないって、何が?」

 「付き合っている男はいるけど・・・」
「けど?」

 「一人じゃないし・・・何人もいるから・・・」
「セフレ(セックスフレンド)?」

 「・・・もいるかな。だって何が『付き合う』事なのか分かんない」



彼女の複雑多岐な男性関係が垣間見える。


聞けばその男たちは皆すぐホテルへ行きたがり、すぐ始めたがるという。
俺から言わせれば、その男全てが身体目当てで付きまとう男どもだ。

きっとユキエは本当の意味での恋愛をまだ知らないだろう。

男は相手が本当に愛する女性だったら、いくら若いとはいえ、
逢うなり早速ホテルへ連れ込んだりはしないだろう。



 「お兄さんは、ここでよく遊んでるの?」
「まあ、遊んでいる方だろうな」

 「ここは初めて?」
「いや、2回目」

 「前回の女の子は指名しなかったの?」
「今回は18歳の新人さんがいるって聞いたからね。君にしたんだ」

 「その子、可愛かった?」
「まあまあね」

 「なんて言う名前の娘?」
「さてね・・・忘れちゃった」


そう尋ねながらも俺の目を見ず、遠くをぼんやりと見ながら訥々と話すユキエ。


「お湯も入ったし、お風呂入ろうか?」 


俺はユキエを風呂へと誘う。

彼女は俺に全く構う様子もなく、独りでさっさと服を脱ぎ、
湯をかぶって自分独りで身体を洗い出す。


「ねえ、あくまで客商売なんだから。そういうのはまずいんじゃない?」
 「・・・そうか、だって皆勝手に始めちゃうから・・・」

「きちんと店で講習受けたかい?」


こういう風俗店では、入店した時に客へのサービスの仕方を教える機会がある。

俗に『講習』と呼ばれるのだが、
彼女の様子ではとても講習を受けたようには思えない。


 「受けたよぉ!5回」
「5回も?普通1回じゃないの?」



<以下次号>







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