華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年09月20日(金)

二次元ronde。 『妻の努め』


<前号より続く>




「俺、サツキさんに興味ある。会ってみたいな」
 「え、私は良いけど・・・でも平日の昼間しか動けないよ」


サツキは主婦。そんな事は百も承知だ。


「だったら平日昼間に会おう」
 「ええっ、お仕事でしょ?お休みはあるの?」

「平日でもたまに休みがあるから、それに合わせて」
 「まあ・・・私は早めに言ってくれれば良いよ」


俺が平日に動く事で、サツキとは案外すんなりと話がまとまった。
最後に互いのポケベルの番号を交換して、その夜は電話を切った。



それから週に2〜3度、深夜に彼女からポケベルがなる。
俺はその度に電話を掛け、色々な話をした。


しかし旦那が家にいるであろう時間にもポケベルがなる。

俺は聞いてみた。


「今って、旦那がいる時間じゃないの?」
 「いるよ」


俺が最も気を遣う事も、実にサラッと言ってのける。


「大丈夫なのかね?」
 「大丈夫だよ、旦那は今パソコン通信中だから」


サツキの家は当時からパソコン通信専用にと別の電話回線を持っていた。
まだ今ほどインターネットが一般家庭までも普及していない時代だ。


先進の趣味を持つ旦那はパソコンの前に座ると数時間は動かないという。
サツキは旦那が目を逸らすその時間を悪用して、つかの間の息抜きに使っていた。


 「旦那は全然別の部屋だし、別に話なんて聞こえないよ」
「そうか、だったらいいけど」

旦那を愛しているというが、どうも彼女の行動は腑に落ちない。


「ねぇ、本当に旦那さんの事、好き?」
 「好きだよ。一番愛しているもの」

「でも・・・どうも俺、分からないんだよね。なぜ他の男と遊ぶのか?」


サツキは戸惑いつつも、今まで以上に深い話をしてくれた。



小柄で気弱で、アニメや少女漫画で夢見がちだった彼女。

サツキの17歳での初体験の相手は、初めて付き合った同じ高校の彼。
・・・今の旦那だった。
それ以来、旦那一筋で結婚まで至る。


他の世間を知らないまま結婚に踏み切ったが、現実は少々厳しかった。

彼女にとって男性は彼だけだが、旦那は彼女以外の女性も知っている。
ひょんな事から旦那の女遊びを知ってしまったのだ。


信じていた唯一の男、旦那の「裏切り」に彼女の中で寂寥感と復讐心が湧き上がる。



その時に都合良く知ったのは、漫画雑誌に掲載されていた伝言ダイヤルだった。
彼女は勇気を出して伝言を吹き込んだ。


そうすると数十件の様々な男性からの伝言が舞い込む。
その中から同世代の男性と付き合うようになる。

サツキは最初「単なるお茶飲み友達」を求めていたのだが、男は違う。
高い利用料を払っておいて、それだけの関係の女性など探す訳が無い。


サツキはその男に上手くそそのかされ、ついにベッドを共にした。

その時、サツキは女の性の快楽に目覚め出した頃。
きっと強烈な経験だったに違いない。



しかし子供と家庭への罪悪感から、その男性とはそれっきりになった。


彼女はいつしか「旦那が一番」と自分に言い聞かすようにしてなった。
自分に言い聞かすという事は、どこか心の中で無理しているという事。

サツキの変化と複雑な心中を知る由も無い旦那。

相変わらずのつれない態度に、パソコンに熱中する様に呆れた彼女は、
そんな時にはこうして伝言ダイアルで他の男に自分の癒しを求めるようになったのだ。


こうしたシステムでは、女性は全くの無料で遊べる。
おまけに女性向け雑誌には、同業者のフリーダイヤル番号が無数に列挙されていた。
たった1円も遣わずに、いくらでも無尽蔵に遊べるのだ。



「旦那に甘えないの?もっと相手してよ!とか」
 「前は言ってたけど、最近は彼も仕事で辛いみたいだからね・・・」


自分の事は置いといて、そのストレス解消をさせてあげたいという。


しかし彼女の本当の欲求は行動の通り、全くの逆だ。


昼間は母親、主婦、そして嫁として三役を独りで奮闘している。
旦那と一息つける時間くらい、もっと甘えたいし肩の一つでも抱いて欲しい。

それが夫婦というものだと思うのだが。



 「だって私は専業主婦で全くお金を稼いでないから、私からは何も言えない」
「でも家事も子育てしているし、自分のして欲しい事を言えばいいじゃん」

 「旦那がお金を稼いでくるんだから、何も仕事してない私は我慢しなきゃ」
「・・・それも違うと思うなぁ」



きっとこれから先は、サツキの実家の環境や、両親の教育方針などの生育歴の問題だ。
俺がとやかく言う分野ではない。

サツキは旦那に食べさせてもらっている身分だ、と繰り返す。
自分の我が侭さえ我慢すれば夫婦関係も家庭も円満になる、という。

本心とは違うくせに。

随分と前近代的な、島国独特の凝り固まった考え方を崩さないサツキ。
古い考え方に呪縛される犠牲者だ。



「でも我慢できて無いじゃん。こうして他の男と遊んでるんでしょ?」
 「でも、でも・・・」

「別にいじめる訳じゃないけど・・・本当はすごく寂しいんだろうなって思う」
 「・・・・・・」

「その分もっと旦那さんに甘えれば良いんだって!悪い事じゃないもの」


俺が言う台詞でもなかったが、サツキの本音と建前の不安定さについ語気を強めてしまう。


 「だって可哀想じゃん、会社でも家でも自由な時間が無いと・・・」
「・・・そういうものかなぁ?」


サツキが旦那と共にする時間は、就寝時の布団の中だけだと言う。
旦那がパソコン通信を終える深夜まで待ち、一緒に布団へ入って寝るのだ。

旦那がサツキを求めてくる時には、例え自分の気が乗らない時でも
生理じゃない限り応じるという。

「生理の時は、お口でしてあげる。だって気持ち良いんでしょ?」

それが旦那の稼ぎで食わせてもらう『妻の努め』だと。


そんな状態で・・・本当に旦那が一番感じるのか。
やはり「自分自身に強く言い聞かしている」のだろう。


本当は寂しいのだ。
でも彼女は自分からは何も要求できないでいる。
様々なしがらみに、殻が破れない。


「自分がHしたい時だってあるでしょ?そういう時はどうするの?」
 「・・・我慢する」

「だったら他の男に伝言で頼らず、旦那さんに抱いてって言えないの?」
 「言えないよぉ。だって疲れているんだし・・・・」


きっと旦那の態度にも大きな問題があるはずだ。

その場限りだけでいい伝言ダイアルでの男たちなら好き勝手が出来るが、
一生の付き合いになる、それもご機嫌を損ねる事が出来ない旦那には妙に遠慮する。

スキンシップや愛情を求めるのが前者だとは、あまりに寂しいではないか。
ただサツキがそれでいいのなら、そのままで良かろう。

俺が深入りする理由もない。
俺も割り切って楽しませてもらおうか・・・


俺はサツキの羞恥心を煽ってみる。


「・・・違うでしょ、本当は自分から求めるのがもの凄く恥ずかしいからじゃない?」
 「・・・だって言えないもん、旦那におかしいと思われちゃう」

「でもね、男ってHしてって言われると嬉しいものだよ?」
 「でもね、でも・・・」


受話器の向こうで真っ赤な顔をしているサツキの様子が容易に想像できる。



突然、受話器の向こうから幼児のむずかる声がした。


 「ごめん、娘が起きたみたい・・・」
「じゃいいよ、また今度続きを話そう」


俺はサツキに強い興味を持つようになった。



<以下次号>







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